わくわくドキドキする器を。“次の時代の波佐見焼”への飽くなき探究に迫る。

わくわくドキドキする器を。“次の時代の波佐見焼”への飽くなき探究に迫る。

2024.11.15

毎年開催される器とテーブルコーディネートの祭典、「テーブルウェア・フェスティバル」。

例年1月~2月に開催されていた同イベントですが、2023年から少しずつ時期が早まり、今年は11月の末に開催が決定しました。日程は2024年11月28日(木)~12月4日(水)です。


会場は昨年と同じく、「東京ドームシティ プリズムホール」。
かつての東京ドーム会場と比べたら、規模は小さくなっています……が、それでも小さくならないのは、波佐見焼の志!

波佐見町では、テーブルウェア・フェスティバルに出展する各窯元や商社のみなさんが、この一大イベントに向けた新商品を生み出すため、日々心を燃やしています。

ここ20年で立ち上げた波佐見焼のブランドテーマは「カジュアルリッチ」。
東京というトレンドが集まる都市での展示に向け、長崎の小さな町で生まれる器たち。その挑戦をご紹介します。

13社、それぞれの高みへ。

波佐見町では、テーブルウェア・フェスティバルに13社の窯元・商社が出展します。

一年に一度のイベントに向け、毎年新しい方法を模索し、シリーズを開発したり、難しい技法を安定して生産すべく試行錯誤したり。
各社それぞれの個性や強みを活かしたものづくりを追求しています。

テーブルウェア・フェスティバル2024 参加窯元・商社一覧▼

一真窯

一龍陶苑

永峰

大新窯

重山陶器

高山

丹心窯

西山

利左エ門窯

和山

石丸陶芸

西海陶器

浜陶


「わくわくドキドキする器」を。ヒントは“食”にあり

テーブルウェア・フェスティバルに向けた波佐見焼の開発を支えるのは、今田功さん。波佐見町では「今田先生」の呼称で定着し、信頼を寄せられています。
今田先生は、全国の陶磁器や工芸品の産地を駆け回って情報を集め、各地で窯業や伝統工芸の産業が前に進むためのプロデュースをされています。

今田 功(いまだ いさお)先生
オフィスイマダ代表。 広告代理店に勤務し、日本最大級の器の祭典「テーブルウェア・フェスティバル」のプロデューサーに就任。長年本役職を務めていた。
現在は全国各地の伝統工芸品・陶磁器の産地を回り、アドバイザーとして活躍。

2024年6月末。参加社がすべて揃っての全体キックオフが行われました。

各社それぞれの今年の方向性や開発の意気込みを話します。

以前技術的にうまくいかなかったものに再挑戦する。ヒット商品のカラーバリエーションを増やす。今までの自社商品にはなかったテイストでつくってみる……。

年に一度のテーブルウェア・フェスティバルは、技術やデザインの幅を広げるために目指すひとつのゴールのようなイベントになっています。
そうして各社が目指す根本にあるものは、「使う人に手に取ってもらえる器」。


今田先生は、今まで沢山の器を作ってきた各社のプロフェッショナルに対しても、より高みを目指すためにさまざまな視点から鼓舞します。

「さらなる前進のヒントは“食"にあります。器は最高の脇役文化です。『これで○○を食べたらおいしい』というように、いい器には“のせたい食べ物のイメージ”が見えてきます。みなさん、“食”の勉強をしてください。見た人、手に取る人が“わくわくドキドキする器”をつくりましょう。」

「わくわくドキドキする器」。それは、料理を通して使う人に夢を与える器。
400年前から日用食器として使われてきた波佐見焼は、その根底にある“使う人のための食器”という在り方を継承しながらも、形を変えてそれを体現しようとしています。

波佐見は後ろを見ない。前進あるのみ

「カジュアルリッチ」、それは、カジュアルだけれどリッチ。パーティーシーンや特別な時間にも耐えられながらも、フォーマルエレガンスな高級路線とは異なる立ち位置です。
仰々しくはないけれど、ふだんから仕立てのいいジャケットを着るような、そんなイメージでしょうか。

一般家庭でのちょっとしたホームパーティー、カジュアルでおしゃれなカフェ、食のジャンルを問わない新しい形態の料理を提供するホテルやレストランなど……波佐見でつくられる焼きものと同様に、格式や型にとらわれない人やシェフに選んでもらえる器を生み出すのが、新たな波佐見焼の課題といえるでしょう。


「波佐見には伝統がない。400年の歴史と技術はありますが、『こうでなきゃいけない』という様式や縛りはないのです。

とにかく波佐見は後ろを見ないで、前進あるのみです。自分が何をつくりたいのか、どんな料理を盛りつけてもらいたいのか、たくさん考えて、進んでください。」


今田先生の言葉通り、各社の職人やデザイナーたちは、それぞれの想いや培った技術でどんなことができるのか、悩みながらもとにかく前を向いて挑戦しています。

月に一度、参加するすべての窯元や商社を回り、アドバイスをする今田先生。

たくさんの試行錯誤。最終的には世に出ないものも、途中でいくつも生まれます。
しかし、それらの一つひとつが、会場に並ぶ完成品への足がかりとなっているのです。

伝統的な技法や古くから愛される素材感を活かしながらも、現代の住空間にも調和する色や形、展開を模索することも必要になる。

器の薄さ、高台の高さひとつ取っても印象が変わる。どんな場面で使うのか、演出したいシーンは何か。そこには「ただ物をつくるだけ」では見えない世界があった。

精密で高い技術をもってしてもぶつかる壁もある。理想の仕上がりと、技術的に実現できるラインを探り、見極めるのもプロの業。

「自分の実現したいことを見つける」ための終わりなき旅

イベント開催直前の11月中旬には、再び参加する13社が集まり、「求評会」が行われます。 本番前の、波佐見町内でのお披露目の日です。

求評会では、開発を進めた商品を展示するだけでなく、決まった大きさのテーブルのトータルコーディネートをし、見た人が実際に器を使う場面や空気感まで想像できるような演出がなされます。

テーブルセッティングは、開発した器だけでなく、小物やクロス、カトラリーや花瓶に飾る植物など、すべての要素が合わさって完成します。

各社の個性あふれる装飾は、まさしく「型にはまらない波佐見焼」の姿。
かわいらしさのあるテーブルや、スタイリッシュなテーブルなど、見ているだけでわくわくします!

ランチョンマットは器のカラー展開に合わせて。ときには植物やバスケットに敷く紙ナプキンの柄、インテリアのオブジェがテーブルの雰囲気をつくる鍵に!

器に描かれたきらめくオリーブの柄と、プレート中央の飾りを揃えて統一感を。マットやガラス類、ナプキンリングの品の良いゴージャス感も、気持ちを高めてくれる。

今年のテーブルウェア・フェスティバルは11月末から12月の頭で開催。クリスマスやお正月に向け、テーブルウェアを揃えたい時期ではないでしょうか。

ホリデーを意識したセッティングができるシリーズや、気持ちを整えて迎えたいお正月にぴったりの上品な器など、特別な時間にも活躍する素敵な食器がたくさんですよ。


イベントはいよいよ目前。参加各社、それぞれ今できる工夫や挑戦はしてきました。

しかし、器づくりの道には終わりがありません。
今まで磨いてきた業や新たなものづくりへの想いを抱え、窯業を通して実現したいことを見つける旅は続いていきます。


時代に合わせ、手に取る人のことを想ってつくられる焼きもの。
これからの時代の波佐見焼にも、ぜひご注目ください。


テーブルウェア・フェスティバル2024 ~暮らしを彩る器展~

日程:2024年11月28日(木)~12月4日(水)

時間:10:00~18:00

会場:東京ドームシティ プリズムホール

公式HP:https://www.event-td.com/tableware/2024/

公式Instagram:https://www.instagram.com/tablewarefestival/

この記事を書いた人
Hasami Life 編集部(すぎた)