窯元探訪 vol.5

by Hasami Life 編集部
窯元探訪 vol.5

波佐見町には全部で59の窯元があります。そして小さな町の至るところに、波佐見焼と真摯に向き合う「人」が存在します。このシリーズでは、窯元を順番に尋ね、器づくりについて話を聞くだけでなく、ふだんは見られないプライベートな顔までご紹介します。

波佐見町の折敷瀬郷(おりしきせごう)という地区に窯を構える『翔芳窯(しょうほうがま)』への探訪、最新話の更新です。代表の福田雅樹さんはどんなことを大切にしながらデザインしているのでしょうか? 同業者の距離が近い、波佐見町ならではのエピソードとともにご紹介します。


※記事内で紹介する商品の中には、Hasami Lifeで取り扱いのないものもございます。翔芳窯さんのオンラインストアも併せてご確認ください。





器と料理。ホワイトラインが目指す姿


――最近は『ホワイトライン』がとっても人気ですよね!

福田さん(以下、福田)  ありがとうございます。生産当初はイッチン描き(=窯元探訪 vol.4 参照ができる職人が1人しかいなかったのですが、現在は4人まで増やすことで、しっかりと生産体制を整えています。

ホワイトラインは、瑠璃(青)のほかにグレーと赤の3カラーあるのですが、お客さんにはたいてい「どんな料理を盛ったらいいの?」と聞かれます。使い手が重視するのは、器のデザインや柄よりも、器の色と料理の相性なんですよね!

そこで、料理を盛り付けた写真をタブレットで見られるようにしたんです。これを見てもらえれば、「こんな使い方できるんですね!」とすぐに納得してもらえます。一見、とっつきにくい瑠璃にも冷やし中華を盛り付ければ、一気に日常の器であることをお伝えできるから不思議です。

料理の写真は、ブランドごとに整理。毎年2月に東京ドームで行われるテーブルウェアフェスティバルでは、このタブレットを置いてからホワイトラインが完売するようになった。

写真は、料理の先生にお願いしているそう。器よりも料理を主役にしてもらうことで、食卓をイメージしやすくなる。

―――新しい商品を開発する時は、やはり料理との相性を考えるのでしょうか?

福田  それが、まったく考えません(笑)。逆に料理のことは何も考えずに作っています。僕自身は、売り場でパッと目についてどうしても気になって目が追っかけてしまうような、そんな商品が作りたいと考えているんです。

例えば、皿の中央に美しい柄があっても、料理を盛り付けてしまえば、見えなくなってしまいますよね。だから、普通は中央にあまり柄を入れたがらないんです。でも、うちでは中央にも柄を入れます。売り場に並んでいるときこそ、存在感のあるデザインにしたいので。

器の全体にデザインを施すことで、見た目以外のメリットも生まれます。それは、傷が付いても目立たないこと。ホワイトラインの瑠璃色は美しいがゆえに、ものすごく傷つきやすい。そのデメリットをデザインでカバーします。

「もしも、シンプルなデザインだったら、ナイフやフォークの跡がはっきりとわかってしまうでしょう?」と福田さん。

福田  デザインする時に料理のことは考えないけれど、使い手の気持ちはフォローアップしたいんです。つまり、売り場に料理の写真を置くことは、デザインを気に入ってくれたお客さんの「最後の決め手」を作るためです。販売時、タブレット片手にこれらを全部やってくれているのが、大学生のバイトなんですよ。


―――バイトさんですか!

福田  彼女は、料理写真を上手に使いこなして器の説明をするだけでなく、うちの工房にも見学に来て、職人の仕事をじっくり観察し、お客さんにしっかりと伝えてくれています。製造工程の動画もすぐに見られるように準備しておき、迷っているお客さんには声をかけてお見せする。そうすることで、お客さんも「この商品は、すべて手でやってるんですね!」と喜んでくださる。デメリットもメリットもしっかりお伝えした上で納得してもらっているんですよね。だから、彼女が担当した催事の売り上げは確実に伸びます。もうね、「なんだ?あいつは!」という感じなんですよ。むしろ、その子を取材してほしいくらい(笑)。


―― 敏腕ですね。彼女を駆り立てるものは何なのでしょうか?

福田  元々はうちの常連さんで、うちの器を好きだということが一番だと思います。そばで見ていると、お客さんに説明するのにも「私、これ使ってるんですけど」から始まるんですが、嘘じゃなくて本当に使ってくれているんです。しかも、自分で買うんですよね。「私はちゃんとバイト代をもらっているので、ちゃんと自分でお金を出して買います」って。

こんなにもうちの器を理解している人間はなかなかいないので、「大学卒業したら、うちにおいで!」としつこく誘っているんですけど、学校の先生になりたいとういう夢があって、なかなかいい返事がもらえないんです。

透明感とツヤ感を持ち合わせた真っ赤な器には「パスタがぴったり」とおすすめしている。フォークとスプーンを添えて。

すべて電子レンジ・食器洗い機の使用OK。日常的にガシガシ使ってほしい食器。


ホワイトライン開発秘話


――ちなみにホワイトラインはどのような経緯で誕生したのですか?

福田  西海陶器という商社さんの営業・近藤さんのむちゃぶりからですね(笑)。

最初、白地に青い絵の具で柄を描いてたんです。今思えば、とても普通のことですよね。それを見た近藤さんが「反対にしたらいいんじゃない?」って。「そんなこと、できるわけないやろ!」とその場では伝えたのですが、僕は開発を続けてみた。イッチンという技法を使うことまでは考えついたものの、いよいよ自分の知識だけじゃ難しいとわかったとき、白いイッチンをすでに使っていた窯元・中善(なかぜん)さんを訪ねて、何を使っているのかを教えてもらったんです。


――近藤さんのむちゃぶりと、中善さんの器の大きさででき上がったと。

福田  はい。中善さんは「全然いいですよ!」と快諾してくれ、ようやく完成させることができました。相手が近藤さんじゃなかったら、きっと最後まで粘りませんでしたね。これまでもいろいろなものを一緒に開発して実績がある方だったので、時間をかけることができました。

やっぱり、「物」の前に「人」と「人」なんですよね。人間が酷かったら、いくらいい物を作っても絶対に売れないです。まずは「人(=自分)」を作って、「人」を買ってもらって、その後にやっと「物」を売ることができる。これは、前職広告代理店に勤めていた現スタッフに教わりました。

ホワイトライン。皿だけでなく、蕎麦猪口やマグカップ、アペリティフなどもある。Hasami Lifeでも一部取り扱い中


福田  波佐見町にも色々な商社がありますが、西海陶器さんは、ゼロから開発するスタイルが多いですよね。「売れてるから、売ろう!」じゃないんですよ。実績を見て買っていく商社さんとはちょっと違うんです。だから、制作もすごく慎重。そのやり方でホワイトラインは生まれました。



新商品は調子がいいときにこそ考える。


――新商品はどのようなタイミングで考えていますか?

今、売れている商品の売り上げが落ち始める前に、必ず新しいデザインを作ります。落ちている時には、いい物って絶対にできないので。売れているときにこそ、新しい投資をして次の商品を考えているんです。と言いながら、ずっこけたりもするんですけどね(笑)。

でも、散々ずっこけた挙句に新しい商品も生まれますから。もちろんロングセラーの商品の魅力は守りながらも、時代の流れと共に求められる器が変わっていくのは普通のこと。開発は調子がいい時にこそしていかないといけないって思ってますね。ちっちゃな会社なので、特にそこを意識しています。

素焼きにマジックなどでデザインイメージを描く。社長になる前に比べると、開発のペースはすごく落ちているというが、時間があるときには一気に作業。

原型は必ず手作業で。出来上がったら型屋さんに持っていき、型を生産してもらう。

カンナを持ち続けることでできた「彫りだこ」。新作を考えるのが福田さんの一番の仕事。

福田  ブルーシリーズは和山さんにアドバイスをいただいて生まれたんですよ。うちはこれがなかったら本当に倒産してたかな(笑)。

それまでは、茶碗や湯呑みばっかりを作っていたんですね。それを見た和山さんが「これまでの茶碗や湯呑みばっかりやっていたら、そのうち行き詰ると思うよ。その技術を生かして皿にしてみたら?」と助言してくれたんです。さらに「“このブランド、知ってる!”と覚えてもらえるように絵柄も付けてごらん」と。

ブルーシリーズ。筆の特性を生かした草花モチーフの絵柄を大胆にレイアウト。深みのあるブルーの色合いが食卓になじむ。

福田  同じ時期、今度は中善さんが白い器を作るコツを教えてくれて。どちらも7年前くらいですね。それを受け、僕は皿の開発を始めました。会長(茂喜さん)は全然信用してくれなかったのですが、ある催事の時に「これまでの商品を一切出さず、新商品で勝負する」と言ったんですよ。そしたら、ドカンと売れ始めて。アドバイスをくれた和山さんと技術を教えてくれた中善さんのおかげだと思っています。



デザイン性と機能性の2つを追求したい。


――ほかにこだわっていることはありますか?

福田  デザイン性を重視するのは、どこの窯元も同じだと思っているんですよね。もうひとつ加えるならば、絶対的な機能性。

例えば、マグカップ。僕は、大きいのは1つあったらいいだろうと思ってます。その上で、持ったときに軽さを感じるものがいいと思っています。中に飲み物が入ると、重くなりますが、取っ手に指がたくさん入れば、めちゃくちゃ軽く感じるんですよね。普通は3本で持つか、2本で持つかだと思うのですが、うちは親指以外は4本入ると思います。

機能性を付け加えると、収納は難しい。収納までしっかり考えて作っている白山陶器さんやマルヒロさんには、勝てないですよ。でも、一度使ったら、軽くて持ちやすい。そうすれば、「これ、重ねにくいのよね…」なんて、お客さんは言わないですもん。

「桜流水」。取っ手が大きいことで、見た目は重そうなのに、持ったら軽い。このギャップでずっと売れ続けている。

福田 桜流水は25年前からあるロングセラー商品。これが売れて、うちの会社は増築したんです。「桜流水」という商品名なので、この工房は「流水御殿」と呼んでいます。当時は、従業員が家まで持って帰って内職をしていたほどなんですよ。今でも、マグカップを作る時はこの形をヒントにしています。やっぱり指がたくさん入る方がリピーターが多いんです。

「経費ばっかり使って、なかなか物にならない」としょっちゅう言われていますが、それは仕方がないことですよね。それこそ、このやり方でのし上がってきたんですから。今は、仕事が面白くてたまらないです。状況が悪ければ悪いだけ、面白いです。それは「燃える!」とか、そういう意味ではなく、そのときのために準備していたものが当たるから。今も新商品を考えているところなんですよ。いつか調子が悪くなった時に必ず助け船になると思っています。




【翔芳窯】

長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷761-8

0956-85-4724


●公式サイト

https://shohogama.com/

オンラインストア

https://shohogama.stores.jp/sale

Instagram

https://www.instagram.com/shohogama/




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