HOME よみもの 波佐見の人 【住めばよかとこ波佐見 vol.6】早朝の交流会に100回参加してきた理由。 2020.12.26 【住めばよかとこ波佐見 vol.6】早朝の交流会に100回参加してきた理由。 by Hasami Life 編集部 ―――自分が暮らす場所は、自由に選ぶ。長崎県波佐見町にも、少しずつ移住者が増えています。波佐見町にやってきたきっかけは、みなさん十人十色。波佐見町に住んでみて、どうですか? 移住者のみなさんにリアルな声をうかがいます。 「住めばよかとこシリーズ」の第2弾。波佐見町に移住してきた司法書士の倉科さんの後編です。仕事がまわりはじめるきっかけは、朝ごはんを食べる会? どういうことなのでしょう。 倉科 聡一郎(くらしな そういちろう)、1977年生まれ。神奈川県横浜市出身。2010年に司法書士として「くらしな事務所」を開業。趣味は読書と、バスケットのNBAの試合をTVで観ること。 朝飯会で、運命を変える人に出会う。 ――:倉科さんが積極的に参加されている波佐見町の『朝飯会(ちょうはんかい)』。仕事にも大きな影響があったということですが、まずは朝飯会について教えてください。 倉科:朝飯会というのは、月に一度、町内外の人々が集まって朝食をとりながら各々が好きなテーマで自由に語り合う会です。Hasami Life の方々も最近参加されてましたよね。 200回以上続いている朝飯会。参加者は幅広く、大学教授や大手企業の重役、アーティスト、はたまた地元の主婦や農家の方、そして学生も、職業・年齢・性別・地域を問わず、来るもの拒まず。ひとりずつ前に出て簡単なスピーチするのが決まり。ただし、自慢話と宣伝はNG(笑)。 ――:はい。以前「朝飯会」を取材させていただいたことはあったのですが、最近は取材以外でも参加しています。倉科さんの初参加はいつでしたか? 倉科:波佐見町へ来て、すぐでしたよ。2010年11月2日に波佐見に引っ越してきて、2日後の11月4日に朝飯会に参加しました。引っ越しの荷物が届くより先に朝飯会へ行きましたね。 ――:えー! 早いですね。 倉科:これには理由がありまして。波佐見に引っ越して来る前に視察で訪れたとき、民泊で泊めてくださった畑中さんの紹介なんです。畑中さんに引っ越してきたと電話で報告したら、「朝飯会があるから来てみれば」と誘ってくれたんです。朝飯会のことはなにもわからないけど、暇だし、行ってみようと。 地元住民にも愛される波佐見町の交流拠点「文化の陶 四季舎」の館長をされている畑中昌三さん。観光客とのふれあいも多い。畑中さんの活動は 波佐見へ行ったら、まずここへ vol.1などで特集。 ――:はじめての朝飯会では何を話したんですか? 倉科:ご挨拶だけさせてもらいました。横浜出身ということ、司法書士としてこれから事務所を開くことを話したと思います。そうしたら、朝飯会終わりに主宰者である西海陶器株式会社の児玉盛介(こだま もりすけ)会長に声をかけられたんです。その日に会長のお宅に招かれてお話したら気に入ってくださったみたいで、私のお客さまになってくれそうな方々を紹介してもらったんです。 朝飯会を主宰する西海陶器株式会社の児玉盛介会長。クラフトツーリズムを推進するなど、波佐見町の発展のために尽力している。クラフトツーリズム活動の原点とも言える『朝飯会』については 【はじまる、グリーンツーリズム vol.2で特集。 ――:朝飯会が初対面だったのに、そんな急展開があったんですね。 倉科:びっくりしました。「こういうことだったらお役に立てると思います」と話したら、朝飯会の3日後くらいには、一緒に町の方々を訪問して顔合わせをさせてくれました。今の仕事はそのご縁とそこから派生しているものがほとんどで、もう99%と言っても過言ではないかも。 ――:まるで福の神みたいな存在ですね……! 倉科:非常に感謝しています。 ――:倉科さんは東京でも司法書士事務所で働いていて、資格もお持ちです。波佐見町でもお客さまと出会えれば、きちんとお役に立つことができて、どんどんお客さまが口コミで増えていったんですね。 倉科:今はこうして事務所を借りられて、スタッフさんにも助けてもらって、おかげさまで経営できています。児玉会長をはじめ、みなさんのおかげです。すごいことだなあと思いますね。 経営されている「くらしな事務所」。もともと薬局だった建物を借りている。常駐のスタッフさんも2名在籍。自動販売機もレトロでおしゃれ。 100回以上、朝飯会に参加し続けている理由。 ――:朝飯回は最初に参加してから、毎月行ってるんですか? 倉科:そうです。私が移住してから10年間で、月1開催なので120回くらい朝飯会が行われています。仕事の都合などで皆勤賞とはいかないですが、少なくとも100回は参加しています。 ――:100回! そこまで長い間コンスタントに朝飯会に通っている人は、そう多くないのではないでしょうか。自由参加ですし、朝も早いですよね。 倉科:やっぱり少しずつ顔ぶれは変わりますよね。私はかなりの常連だと思います。 ――:早起きは苦じゃないですか? 倉科:きついです。特に、前日に飲み会があるともう大変です(笑)。毎回眠いですけど、月1回ですし、みなさんの前で3分間スピーチをするのは、人前で話す苦手を克服するためでもあるので。 朝飯会で前に立って話す倉科さん。 ――:倉科さんがお話しているところを拝見して、スピーチが得意なのだと思っていました。 倉科:非常に苦手です。最初は人前で話すことが、もうつらくて。でも町の方と交流できるチャンスだったので参加したかったんです。よそ者の私としては、朝飯会は自分を知ってもらえる場所でもありますから。 ――:そういう思いを持ち続けて、10年間ずっと参加してきたというのは、並大抵のことではないと思います。 倉科:こんなこと言うのも恥ずかしいですけど、朝飯会が好きなんですよね。いつも朝飯会の最後の児玉会長のスピーチがおもしろいんです。もう、めちゃくちゃストレートに熱い話をしてくれて。思ったことをはっきり言うんです。だから、朝飯会が好きという以前に、児玉会長が好きなんですよね。 毎回、朝飯会の最後に、熱のこもったスピーチを行う西海陶器株式会社の児玉会長。 ――:一番印象に残ってる児玉会長のお話を教えてください。 倉科:特に覚えてるのが、仕事に関する考え方です。「仕事には2種類ある。生きていくための仕事と、使命と呼ぶような仕事だ。私にとって波佐見を元気にするための活動は使命。自分の世代だけでなく、子や孫にまで受け継がれるものを残したい」とおっしゃっていました。 それまで私にとって仕事はお金を稼ぐもの、"生きていくための仕事"でした。児玉会長は"使命としての仕事"もつくり、波佐見町に貢献して人とのつながりを深め、お金に換算できないものを多く得ている。すばらしい生き方だなあと思いますし、どちらの仕事も大切だなと感じました。 10年間、波佐見町の人びとに刺激を受けてて、変化してきた。 ――:朝飯会でご自身が話すことはいつも事前に決めていますか? 倉科:何個か候補をしぼって、練習しています。長話にしたくないので長さを調整して、話す順序も考えて。ある程度決めたら、妻に話してみます。「こんな話をしようと思ってるんですけど、どうでしょう」って。お風呂に入浴中や車の運転中にも、口に出して練習しています。 ――:とてもストイック! 和気あいあいとした集まりですし、そこまで練習して朝飯会に臨んでる人は少ないと思います。 倉科:ほかには、いないんじゃないでしょうか(笑)。 気さくな語り口で、いつもわかりやすいスピーチをする倉科さん。ほかの人の話を聞くときも、あたたかなリアクションで場を和ませる。 ――:どういう内容を話すことが多いですか? 倉科:なにかしらお役立ち情報をお届けできればいいなと思ってます。 ――:先日、消費と浪費と投資の区別についてお話されていて、とてもタメになりました。 倉科:お役に立ててよかったです。ビジネス書を読むのが好きなので、得た知識をコンパクトに共有できるように心がけています。 ――:どうしてそこまでスピーチを重視されているんですか? 倉科:朝飯会に来る方々によろこんでもらいたいのはもちろんですが、仕事のためでもあるんですよ。「相続について話してください」といった講演の依頼が結構くるんです。自分から積極的に講演を開きたいとは思ってないんですけど、せっかく頼んでくださったものはできるだけお受けするようにしているので。そういう場で、朝飯会で培ったスピーチ力が活きるんです。 ――:人前で話すことに慣れてきた実感はありますか? 倉科:ええ。周りからも「倉科さん、以前と違うね」と言ってもらえます。ビシッと話せれば、聞いてくださる多くの人に一度にメッセージを届けられます。自分の人となりもしっかり伝えられるので本当に重要だなと思いますね。 ――:新しい場所で、朝飯会をはじめとして、いろんな刺激を受けて……変わりたいという気持ちで移住されたとおっしゃってましたが、ご自身の変化は感じていますか? 倉科:朝飯会でお会いする方々は、みなさん成長したと褒めてくれますね。10年前、波佐見町に移住してきたころは人前で話すのがつらかったですけど、今は話すスキルも高めることができました。住む場所が変わって、家族をつくって、人とのつながりも増えて、自分自身も変わってきて。10年で、想像していなかった人生になっています。 ちょうど10年目の朝飯会で、感謝の気持ちを話す倉科さん。「これからの10年もよろしくお願いします」と頭を下げると、参加者からは笑顔と拍手があふれていた。 倉科さん、たくさんお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました! (シリーズを最初から読む) ◎福田奈津美さん編◎ 【住めばよかとこ波佐見 vol.1】わたしが波佐見へやってきた理由 【住めばよかとこ波佐見 vol.2】「空き工房バンク」がスタートするまで 【住めばよかとこ波佐見 vol.3】結婚、子育て、波佐見でのリアルな暮らし 【住めばよかとこ波佐見 vol.4】地元の人を大事に。移住者としての心得 ◎倉科聡一郎さん編◎ 【住めばよかとこ波佐見 vol.5】新天地で人生を再開拓、司法書士の10年。 ▼ 倉科さんへご相談の方はこちらからどうぞ。 『司法書士 くらしな事務所』長崎県東彼杵郡波佐見町宿郷631-2TEL 0956-76-7753FAX 0956-76-7757E-mail: kurashina770529@sound.con.ne.jp Tweet 前の記事へ 一覧へ戻る 次の記事へ Hasami Life 編集部 この記事を書いた人 Hasami Life 編集部 関連記事 2023.09.29 窯元探訪【丹心窯】vol.28 長﨑忠義『水晶彫の秘密。』 波佐見には、町の至るところに波佐見焼と真摯に向き合う「人」が存在します。今回、おじゃましたのは、佐賀県武雄市との県境にある波佐見町小樽郷に窯を構える『丹心窯(たんしんがま)』さん。まるでジュエリーのような輝きを放つ、唯一無二の美しい波佐見焼、その手仕事の秘密に迫ります。 2023.09.22 窯元の火を止めるな! 技術と雇用をつなぐ、波佐見焼企業のM&Aに迫ります。 後継者不在を理由に事業をたたむケースも増えているなかで、窯元の高山陶器(現・株式会社高山)と、商社である西海陶器株式会社はどうやって事業承継に結びついたのか。その先にどんな未来を見据えているのか。 新旧の社長に話を聞きました。 2023.08.25 【編集スタッフ募集中】波佐見焼の魅力を伝える Hasami Life 編集部に密着! 「波佐見焼や波佐見町、職人の手仕事のことを知ってもらいながら、ご自宅に波佐見焼を迎え入れてほしい!」これがHasami Life編集部の願い。週1回のよみもの配信を中心にさまざまな活動をしています。実際、どんな仕事をしているのでしょうか? 今回は、編集部員のたぞえさんに密着します。
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