“よかお茶”をつくる。原田製茶のお茶づくり vol.2

by Hasami Life 編集部
“よかお茶”をつくる。原田製茶のお茶づくり vol.2

お茶は、1191年に長崎県平戸島から、
日本へ伝来したと言われています。
つまり、長崎県は日本一古いお茶の産地!

古くから茶樹が自生していたとされる
波佐見町、その鬼木郷にある原田製茶さん。
日本の棚田百選に選ばれる
鬼木の棚田の山の上に茶畑を広げ、
気候や風土にあったお茶をつくっています。

「うわあ、このお茶おいしい!」
その味わいに驚いたHasami Life編集部は、
日本茶アワードで受賞したほどのお茶と聞いて大納得。
おいしさの秘密を訊くため茶畑へ行ってきました。

今回 vol.2 では製茶の奥深さ、玉緑茶の魅力についてうかがいました。

原田賢一
波佐見町鬼木郷のお茶農家で生まれ育ち、農協で働いたのち34歳で原田製茶を継ぐことを決意。52歳の現在もお茶づくりに打ち込み、製茶の技術についても研究を重ねている。原田製茶は2016年から日本茶アワードに出品し、そのおいしさが毎年高く評価されている。

 

お茶は"蒸し"で8割が決まる。

――:
原田製茶さんでは、お茶を栽培するだけでなく、自ら製茶まで手がけているそうですね。

賢一:
はい、お茶生産者4者で建設した共同工場で製茶しています。波佐見町内にあるので、収穫したらすぐに山を降りて工場に持っていき、まず蒸します。味を落とさないように急いで蒸して、そのあとに揉んで乾かす。お茶は蒸しで8割出来が決まってしまうんですよ。

――:
え! じゃあどんなに畑で頑張って、いい新芽を収穫しても……。

賢一:
そう、蒸し方が悪かったら、いいお茶ができないんです。

――:
茶葉って蒸すのにどのくらい時間がかかるものなんですか?

賢一:
普通のお茶だと、だいたい30秒!

――:
そんな短いんですね。

賢一:
原田製茶のお茶は深蒸しに近くて、90秒くらい。ただ、必ずこの秒数だけ蒸らす、と決まっているわけじゃないです。その年によって、摘んだ葉っぱが薄かったり厚みがあったりするので、葉っぱを見て蒸し方を変えます。

――:
蒸し方は、ご自身ですべて決められているんですか?

賢一:
はい、過去のデータを元にして、いろいろ試しています。4者でつくった共同工場で一緒に作業するので、その仲間とも情報交換してますよ。誰かがよかお茶をつくってたときには「どがん蒸した?」とか聞いてね。蒸すってひとことで言っても、蒸す機械の角度や回転数とか、中の軸で葉を叩く回数とか、いろんな要素が絡み合ってるんです。

――:
奥が深い。そう聞くと、自社で製茶までする重要性を感じますね。

賢一:
大きく味を左右しますからね。なによりも自分たちが思うような蒸し方ができますから。

――:
原田製茶さんの「鬼木みどり」というブランド名は、どうやってつけたんですか?

賢一:
「鬼木みどり」は、東京の日本料理の名店「分とく山(わけとくやま)」の料理長、野﨑洋光(のざき ひろみつ)先生がつけてくれた名前です。鬼木郷の地名を入れて、地元を大事にしなさいとおっしゃって命名してくださいました。「日本再発見塾」というプロジェクトで野崎先生が波佐見にいらしたときにご縁があって、うちのお茶を気に入ってくださったんです。

 

鬼木の棚田の展望所からの眺め。この展望所よりさらに山を登った場所に、原田製茶さんの茶畑がある。

 

実力を確かめたくて出品した、

日本茶アワード。

――:
これまでずっと鬼木でお茶をつくってきた原田製茶さんが、2016年、はじめて日本茶アワードに出品されます。そしてプラチナ賞を受賞。2018年には準大賞を受賞します。どういうきっかけで出品したんですか?

賢一:
日本茶アワードは消費者が選ぶおいしいお茶の大会と知って、出してみようと決めました。

初めての出品から受賞し、毎年高く評価されている。

――:
最初に出品するときは、どんな気持ちでしたか? こういう風に第三者に評価されるって、ある意味怖いことでもあると思うのですが。

賢一:
怖さより「自分たちのつくるお茶が、どれくらいのレベルにあるのか確かめてみたい」っていう気持ちがありました。この賞では、出したお茶を審査員が評価をしてくれるんですよ。出品したすべてのお茶が細かく評価をもらえるんです。 

日本茶アワードで配られる報告書には、出品されたお茶すべての評価が書かれている。

――:
ああ、ちゃんと一煎目と二煎目の味の違いまで書いてある。細かいですね。

賢一:
この賞は、じつは私たちのような生産者より、お茶屋さんからの出品が多いんです。審査員の先生方にもずいぶん珍しがられました。

――:
農家とお茶屋さんで、つくるお茶に違いはあるんですか?

賢一:
違いますよ。お茶屋さんには、茶師がいる。その人たちが、全国のいろんなお茶を農家から買って、香りがいいお茶、味がいいお茶……いろんなお茶をグラム単位でブレンドしてます。だからみなさんが飲まれるお茶は、ブレンドされてるものが多いんですよ。

――:
原田製茶さんでは、どうされてるんですか?

賢一:
うちは、うちのお茶を畑ごとに分けてるだけです。ほかの産地のものは混ぜたりしません。鬼木のお茶だけで勝負してる。そこが一番の違いですね。


九州産「玉緑茶」がおいしいワケ。

――:
原田製茶さんのつくるお茶は、「玉緑茶」なんですよね。

賢一:
玉緑茶というのは、針のようにまっすぐな煎茶とは形状が違って、名前の通り茶葉に丸みがあるお茶です。玉緑茶も煎茶も、葉っぱを蒸すところは一緒。でも最後の工程が違います。煎茶の場合は、最後に茶葉を棒状に伸ばす工程がありますが、玉緑茶にはそれがない。自然のまま、蒸されてくるっとなった形で完成です。

原田製茶さんの玉緑茶の茶葉。勾玉のような形に仕上がっている。

――:
見た目の違いだけなのでしょうか。

賢一:
摘むお茶もちょっと違ってくるんですよ。玉緑茶の場合は茶葉を伸ばさないからこそ、ある程度自然にまっすぐ伸びるように、できるだけ早めに茶葉を摘まないといけないんです。煎茶はもうちょっと成長した茶葉でも、最後に伸ばす工程があるからまっすぐに加工できて、見た目のきれいなお茶になるんですよ。緑茶の中でも日本の代表的なお茶が煎茶なので、みなさんイメージする茶葉って煎茶ではないでしょうか。

――:
確かに、緑茶といえばまっすぐな茶葉が思い浮かびます。多くの人が慣れ親しんでいるのが煎茶ですね。

賢一:
そうです。メジャーな煎茶と違って、玉緑茶は九州の一部でしかつくられていない、希少なお茶なんです。日本で生産される緑茶全体の約3%といわれています。早く摘むぶん、旨みがぎゅっと閉じ込めてあって、玉緑茶ならではの味わいがありますよ。


自分の好きな味を、つくっている。

――:
お茶農家をやっていて、よかったなあと思うことは?

賢一:
お茶を通じていろんな人に出会えることです。日本茶アワードに出品したことで、多くの方との出会いがありました。遠いところからも原田製茶のお茶を買い求めてくれる方がいるのは、うれしいです。

取材は原田製茶さんのお宅に併設された茶房にて行われた。事前に電話をすると、直接この茶房でお茶を購入することができる。

――:
今までお客さまに言われて、うれしかった言葉はありますか?

賢一:
やっぱり「おいしい」ですかね。シンプルな言葉ですけど、言われたらうれしいですよね。それが一番、お茶をつくっててよかったなあって思います。

――:
「おいしい」って幅が広い言葉だと思うんですけど、賢一さん自身はどういうお茶がおいしいと思いますか?

賢一:
そうですね……香りがあって、しっかりとした味があるお茶でしょうか。色はきれいだけど味は薄いっていうお茶もありますからね。

原田製茶さんの茶葉で淹れたお茶。きれいな緑色。香り高く、コクと旨みがある。

――:
そうなんですね。色がきれいなあっさりしたお茶が好きな人もいれば、味が濃くて旨みの強いお茶が好きな人もいて。

賢一:
私としては濃いのが好きかなあ。うーん、そう考えると、結局は自分の好みでお茶をつくってるのかもしれないですね。世の中の味の好みに合わせて新しい品種の栽培にも挑戦してますけど、同時に自分の考える「おいしい」も追求してます。いやあ、お茶づくりって、難しくておもしろいですよ。

原田製茶さんのHP
オンラインショップでお茶をご購入いただけます。
https://www.harada-tea.com

最新情報は、インスタグラムに掲載しています。
https://www.instagram.com/haradaseicha/

【よみもの】
鬼木郷だからこそのお茶づくりを訊いた vol.1
https://hasamilife.com/blogs/walking/haradaocha-1



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