【福田利之さん×波佐見】コラボアイテム発売記念インタビュー〈前編〉

【福田利之さん×波佐見】コラボアイテム発売記念インタビュー〈前編〉

2024.11.22

このたび、人気イラストレーターの福田利之さんと、波佐見焼のコラボアイテムが誕生しました!

誕生した商品はふたつ。
住空間を彩る「イヤープレート」と、四季をテーマにした可愛らしさ満点の「豆皿」です。今回のための描き下ろしイラストを使用し、制作されています。

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Hasami Lifeでは、完成したイヤープレートと豆皿4種を発売するとともに、2週にわたって福田さんへのインタビューをお届けします!

今回のコラボのきっかけや開発のこと、波佐見町に関するあれこれ、ものづくりやデザインについてもたっぷりお伺いしてきました。福田さんのファンも、波佐見焼のファンも必見です。

福田利之 / Toshiyuki Fukuda

イラストレーター。1967年、大阪生まれ。
エディトリアル、装画、広告、CDジャケット、絵本、テキスタイルなど、様々なビジュアル表現を行う。
スピッツのCDジャケット、カズオ・イシグロ「クララとお日さま」、町田その子「52ヘルツのクジラたち」の装画など、多岐にわたる作品を制作。
プロダクトブランド「POSIPOSY」のデザインも手がけており、ほぼ日刊イトイ新聞では「福田利之のホーム&ロック」を連載中。

HP:https://to-fukuda.com/


=====

――:
本日はよろしくお願いします!

さっそくですが、完成した器をそれぞれお持ちしました。改めて、仕上がりはいかがでしょうか?

福田さん(以下、福田):
こちらこそ、よろしくお願いします。
やっぱりできあがると素敵ですね、いい感じ。

――:
最初に拝見したとき、普段から焼きものを見ている立場からしても、「どうやってつくったんですか?」と聞きたくなるくらい、絵柄の表現がすごくて。
福田さんは絵を描かれる際に、インスタントコーヒーを使ってあえて少し古い雰囲気を表現されているとのことですが、その質感まで表れていることに驚きました。

福田:
それは僕も同じ感想です。初めての試みだったので。

どこまでいったらどうなるのかっていうのがわからないので、とりあえず色々と要望を出しました。今にして思えば、だいぶ無茶を言ったと思います。

――:
つくり手にとっては、もしかしたら大変だったかもしれませんが、そうした自由な意見をもらうことで産地の技術や表現の幅も広がるのでよいことだと思います。
今までの絵柄の表現を超えたといっても過言ではないのでは?

福田:
今回の技法は自分の絵との相性もいいように思います。

――:
呉須だけで表現されているのも注目のポイントだと思います。普段、絵を描く際は、多くの色を使われると思うのですが、青一色の濃淡を用いた表現はいかがでしたか?

たとえば、複雑なイラストを表現する際に使われることの多い、「上絵転写」の技法を使うと、より色の幅は広がりますが……

※上絵転写:本焼成を終えたあとの器に、陶磁器用の絵の具で印刷された絵柄を貼り、焼き付ける技法のこと。


福田:
じつは、呉須の下絵付は前からやりたかったことではあって、実際にやってみると意外と「いけるな」と思いました。

転写の場合は、感覚的には普段と同じで、紙の仕上がりのイメージでつくってるので、仕上がりも思った通りという感じなんですけど、今回は、仕上がりの想像はできるものの、思った通りになるのかわからなかったです。

ほんとになにもかも初めてで、色々と教えてもらいながら進めました。


でも、結果的にできあがったものを見て、「想像を超えた」というとちょっと大げさかもしれませんが、とても納得のいくものができたなと。

――:
本当によかったです。ぜひ原画もあわせて拝見したいです。

福田:
原画は12月に波佐見でやるイベントで、器の販売と一緒に展示がありますよ。

※イベントの詳細は後編で!

――:
波佐見に来て、ものづくりをされたのは今回が2回目ですね。

福田:
はい。前回は立体だったので、表現手法が変わりました。より「絵」というのに寄ってるし、呉須、青でやってみたいという気持ちは前からあったのでうれしいです。

波佐見ではスタンダードな呉須を使ったものでありながら、嗜好品に振り切ったほうがおもしろいですよね、という話をしていて、そこからイヤープレートの案が出ました。

でも、イヤープレートだけだとだとちょっと不安なので、気軽に手に取ってもらえる豆皿もつくりました。

――:
両方あるのがいいですよね。

福田:
これ(豆皿)、すごく好きで。今回人気が出てくれればシリーズでもっとつくりたいくらい、気に入ってます。

――:
豆皿は「四季」がテーマですが、何かイメージや思い入れはあるのでしょうか。

福田:
テーマ自体は開発担当の方の提案ですが、自分なりに四季のイメージをふくらませて描きました。とはいえ、がちがちの「四季感」あふれるものを僕がつくっても意味がないので、普段描いているような絵のテイストをしっかり入れています。

あとは、このまわりの、何錆でしたっけ? ……流れ錆。この流れ錆が気に入っちゃって。 やっぱり僕の絵は、ちょっとどこか古いイメージ、レトロな雰囲気があるので、流れ錆とは相性がいいんじゃないかと思っています。

※流れ錆(ながれさび):縁錆という、器の縁に鉄分を含んだ釉薬を塗り、装飾する伝統技法の一種。流れ錆は、その名の通り、錆が少しにじんだような風合いで、金属感のある見た目になる。

――:
縁錆があるのとないのとでは、青い器の印象がまったく違ってきます。絵の額縁のようになって、しまりますね。

豆皿は1枚ずつの販売もありますが、ぜひ4枚セットで飾りたいです。

福田:
そう思っていただければうれしいですね。あとは、値段がいいよね。「この値段で売れるんだ」って。

――:
それがひとつの「波佐見らしさ」でもありますよね。 手に取りやすいぶん、たくさんの方に使ってもらえたら、次のコラボレーションにもつながるかもしれません。

裏側には、ロゴも入っています。ハサミと、動物の顔と、お名前と「hasami」の文字がデザインされているように見えますが……?

豆皿とイヤープレートに共通の、オリジナルロゴ入り。

福田:
なんでしょうね、なんか、僕のイメージではウサギが「波佐見」って感じがするんですよね。ウサギなんかいないと思うんですけど。
ハサミはダジャレになっちゃいますけど、波佐見とハサミで。

――:
焼きものには昔から、ウサギはよく描かれていますよね。子孫繁栄や跳躍の象徴として、縁起がよいとされています。

福田:
へー、そうか。たしかに! じゃあよかったです(笑)。

ハサミも、波佐見だからって言いましたけど、それを強制するつもりもなくて。

――:
解釈は自由ということですね。
しかし、裏までこうして可愛いと、器好きとしてはすごくうれしいです。絶対にひっくり返しちゃうので。

福田:
ここ大事ですよね。
今後もシリーズ化できたら、年号を入れたりなんかしながらも、このロゴでいきたいです。


――:
イヤープレートも見てみましょう。
来年の年号「2025」の数字は、ギラギラしすぎず、アンティークの鋳物のような輝きが素敵ですね。

福田:
うまくマッチしてますよね。これのおかげで食洗機と電子レンジには入れられないですけど(笑)。

――:
主に飾るものとして……でも、もちろん食器として使ってもいいですよね。

福田:
うん。薄さがいいな。食卓でも使いたい。


――:
イヤープレートというのは、どうですか?

福田:
ヨーロッパなどではよく見るイヤープレートを飾るという文化がないことに、今回担当の方と話をしていて初めて気が付きました。
日本でも色々な窯元でよくつくられているのかな、と思っていたんですが、すごく少ないんですね。

ヨーロッパでは結構お土産的につくられていて、それなら「あってもいいよね」という話になり。色のイメージとかも見本にしました。

――:
たしかに、日本には意外と多くないですね。その年ごとの記念品といえば、干支の置物はまだイメージがありますが……

福田:
最初は干支の置物も候補に上がりましたが、着手のしやすさや、平面のほうがビジュアルが活かしやすいということがあり、イヤープレートになりました。

まあ、これまであまりなかったということは、市場がなかったということなんでしょうけど(笑)。
だから、これが人気が出たらすごいぞ、という感じですね。毎年つくりたいです。

――:
本当に。ぜひともコレクションしたいです。
円でなく、八角形の形なのもいいですね。

福田:
型からつくってもらいました。
ひとつだけちょっと残念というか、しかたないんですが、しょっぱなが巳年だったっていう。ヘビモチーフって可愛くするの、一番難しいんじゃないかな。

――:
そうでしょうか。すごく絶妙に表現されていますよね。中央に配置されていなくて、立ち上がったリムの部分にいるという。

福田:
中央には鳥がいるので、酉年みたいになってます。酉年のときにヘビが真ん中にいるかもしれないですね(笑)。

後で思うと、もう少しヘビを出してもよかったんだろうな。

――:
いえいえ、本当に素敵です。よく見てから「あっ、こんなところにヘビいるんだ!」という会話も楽しいですし。白蛇は縁起もよくて特別感がありますね。

福田: お祝い事のときとかの贈りものにもなってくれたらいいなあ。

ロゴが箔押しで施されたボックスでお届けするため、プレゼントにも最適。

――:
真ん中の鳥は、どういったイメージでしょうか。

福田:
鳥は、デザイン的におもしろいかなって。らせんになってる感じとか。
ヘビに、食べられる鳥。冗談ですけど。

――:
これ、鳥が3羽いると思いますが、その境目がないというか。

うずまきの内側と外側で色が変わっていて、さらにそのうずまきを鳥がくわえていて、境界は混ざりあい、正面があまり限定されない絵ですよね。どこから見てもいいような。
福田さんの絵にはそういったものが多い印象を受けています。

福田:
そうですね。入り組んだ感じの、合わさっていくような一体感はあると思います。違うものがひとつになっているタイプの絵を描くことは、最近特に多いですね。

――:
そこにはなにか哲学的なものはあるのでしょうか。

福田:
ないですね。自分が描いていて気持ちいいな、という感覚を大事にしています。 イラストレーションは特に、あまり思想を入れすぎるとその部分が重くなってしまうので。あくまでデザインのひとつ、という感じ。

――:
「自然と人間はひと続き」というような感覚をお持ちなのかな、と勝手に想像していました。

福田:
そういうふうに言ってもらえるなら。まさに波佐見の町と、人との一体感みたいな。

――:
焼きものにおける「土と火と、人と」みたいな。

福田:
そうそう。やがて人も土に還っていくわけですから。

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今回のコラボアイテムの制作秘話から、完成した器の魅力がさらに伝わったのではないでしょうか。

呉須の表現の新たな可能性を探り、素敵に仕上がった2種類の器。飾ってじっくり眺めてもよし、日々の食卓で使ってもよし。大切な方への贈りものにも最適です。
ぜひ、おうち時間を彩るコレクションのひとつに加えてはいかがですか?

後編では、波佐見町でのものづくりについてお話を聞きながら、福田さんが今後つくりたいものの話や、12月から全国の各地で行われるイベントの情報などもお届けします。

器の話だけにとどまらない、福田利之さんのファンも必見の内容です。 次回の更新をお楽しみに。

この記事を書いた人
Hasami Life 編集部(すぎた)