判子の器が焼き上がるまで。
判子で絵付された器には、独特のよさがあります。判子を押す弾力でふくらむ線、たまる色。機械の絵付とは違う"揺らぎ"も判子の器を魅力的にします。Hasami Life で取り扱うブランド「essence of life」の判子シリーズも、判子のよさを活かした器です。今回は普段はなかなか見ることができない、その制作過程に迫ります。
実際、焼きものの判子ってどういうものなんでしょう? 日常的に使う、自分の名字の判子とはどんな風に違うんでしょう?
そこで制作現場へおじゃまして工程を見せていただくことにしました。
こちらのブランドは、柄の絵付けや各色の釉掛けを、それぞれを得意とする窯元が担当し、職人の技術を最大限に活かしているのが特徴。判子の器は、素焼きしたあとの工程を波佐見老舗の窯元・中善さんが担っています。中善でデザイナーとして活躍する太田早紀さんに、案内してもらいました。
使う判子をご紹介!
判子のカップに使われている判子が、こちらです。焼きもの用の判子は、曲面にもしっかり押せるように土台の素材はスポンジの場合がほとんど。それだけでなく、素焼きの器は判子を押す圧力で割れてしまう恐れもあるため、やわらかくて均等に力の入るスポンジが土台に採用されています。
銘判を押す
内側の判子を押す
撥水剤を塗る
外側の判子を押す
目印もつけずに、左から右へ、曲面に当てて押していく太田さん。一定のリズムで、強すぎず弱すぎず、絶妙な力加減で押していきます。
太田さんいわく「判子を押すには技術が必要ですが、手描きの絵付に比べると上達しやすいですし、作業がスピードアップします。ただ、一発勝負なので手描きの絵付より誤魔化しがきかないですね。それから、何百個も美しく揃えるのが大変です。水平をとりながら押していくのも難しい」とのこと。
手で判子を押しているため、一点一点に個性はありますが、どれも一定の基準を満たした出来でなければ出荷されないため、この判子を押す作業ができる職人さんは限られているそうです。編集部でも試しに体験させてもらったのですが、むずかしくてとても売り物にはならない出来でした。
ふちに塩化コバルトを巻く
釉薬をかける前に、ふちに色をつけます。くるりと円を描くように塗ることを職人さんたちは“巻く”と表現していました。
じつはふちに指をかけて釉薬に沈めるので、作業上ふちには絵の具をつけられません。それを"塩化コバルト"という特殊な顔料を染み込ませることで実現させます。つまり判子の絵柄とは異なる顔料で、手間をかけてふちを彩っているのです。
釉薬をかける
窯積み・焼成
手仕事が生み出すうつわ
いかがでしたか?
「essence of life」の 判子シリーズはこうして人の手をかけて、波佐見町でつくられています。
江戸時代からの歴史を踏まえて、縁起のよい図柄の判子の器がデザインされました。その器が焼きものの400年の歴史が残る町で、職人の手によって生み出されているのです。
波佐見で思いを込めて焼き上げられたカップ、ぜひおうちでお使いになってみてください。
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【取材協力】
株式会社中善 http://nakazen-yakimono.co.jp