窯元探訪【福峰陶苑】vol.45 福田和峰『結果がすべてを変えていく。』

窯元探訪【福峰陶苑】vol.45 福田和峰『結果がすべてを変えていく。』

2026.08.28

波佐見のさまざまな窯元を訪ねるシリーズ「窯元探訪」。今回は手描きの器づくりを続ける「福峰陶苑(ふくほうとうえん)」にお邪魔しています。

前編では工場を案内してもらいながら、手描きの価値やおもしろさを探りました。


続く後編では、専務取締役の福田和峰さんに、さらにお話を伺います。

つくったものを届ける、営業の考え方。会社の垣根を超えてつながる波佐見の文化。そして最近になって描きはじめたという一点ものの器の話など。

「人と会って話すのが好き」という和峰さんの雰囲気まで、まるごと伝わるとうれしいです。

いつか継ぐものだと思っていた

波佐見で生まれ育った和峰さん。お祖父さんがはじめた福峰陶苑は家業にあたります。

大学卒業後は、建設機械のリース会社へ。営業担当として、埼玉や栃木、福岡など、全国を転々としながら4〜5年働いていたそう。

当初は、将来的に戻ってくるつもりはなかったのでしょうか?

「いや、その考えは昔からあったんです。帰ってこないといけないんだって。自分の名前にも会社名がついてるんで(「峰」の字)」

「この名前は祖父がつけたみたいです。“かずたか”って、まず読めないですよね(和峰さん)」


幼いころからお父さんやお祖父さんの仕事ぶりに関心を持っていたのかというと、そうでもなく。「そこにレールが敷いてあったから」だと、和峰さんはあっさりと話します。

とはいえ、そのレールはいつまでも続きません。現場の仕事をひと通り経験したあと、和峰さんは“自分にできること”を模索することになります。

手先が器用なわけではない。前職でとった建設機械の資格はどれも活かせない。


そんななかで活路を見出したのが、営業の仕事でした。

「うちの会社って、もともとは営業にあまり力を入れていなかったんですよ。自分は前職の経験もありましたし、商社の方とも仲良くなってご飯を食べに行ったりとか、そういうところからの付き合いが大事だと思ってるんです。

仲良くなればお互いに言いたいことが言えて、仕事もしやすくなる。そこをメインでがんばりたいなと思って、10年くらい前から動きはじめました」

信じる道を切り拓くために

手描きを中心に、伝統的な焼きものを手がけてきた福峰陶苑。お父さんの代までは、いわば職人気質な考え方で、“いかによいものをつくるか”に力を注いできました。

和峰さんが営業に取り組み始めた当初は、お父さんたちと意見が衝突することも多々あったといいます。

「うちの売りはやっぱりは手描き。ほかの会社に真似できない技術とか、べったべたの昔風の伝統的な柄を、っていう考えが父や祖父の頭にはあったんですよね」

「自分としては、そっちももちろん大事ですけど、色の展開だったり、もうちょっとラフな感じの絵があってもいいんじゃないかって。もう一本別のルートをつくれば強くなる、っていう考え方です。
でもそれはうちの柄じゃない! とか。そこは難しかったですね」

その状況を、どうやって打開したんでしょう?

「やっぱり結果です。

半ば強引に出した柄があったんですよ。展示会に。それの受注がどんと決まったときに認めてもらったというか。やっぱりもう、結果です」

「もともと『イッチン』の技法(泥状の土をスポイトなどの容器から絞り出して描く技法)はあったんですけど、点々とか、細かい細工に使われることが多かったんです。それを柄として、大きく採用して」

まるっきりモダンなスタイルに切り替えるというよりは、伝統的な技法も活かしつつ新しいラインをつくっていくという、絶妙な塩梅を感じます。

「絵柄的にはラフでも、総合的に見たときにある程度手間をかけている。そういう商品も増えていますね」

今では、器の企画や営業は和峰さんが主担当に。
ショールームには、伝統柄からポップなものまで、多様な器が並んでいます。

キュートな猫の箸置きもずらり。


与えたい願望が強い

ラインナップの幅を広げながらも、福峰陶苑の核には培ってきた技術や知見があります。

得意とする技法のひとつとして和峰さんが紹介してくれた「イッチン」も、独自に配合した絵の具を使用。その配合割合について、ほかのメーカーから質問を受けることもあるそうです。

「聞かれたらほとんど教えますね。自分のとこだけが儲けようとか、仕事とろうとかじゃなくて、みんな仲いいんで。気軽に質問できますし、自分も教えられる範囲内で教えます」

イッチンの保管は家庭用の冷蔵庫で。遮光が主な目的なのだとか。


「その技法をほかのメーカーさんが使ったとしても、同じ柄でなければ全然いいんじゃないかな。共同で同じ型を使ったり、いらない型をもらったりとかもあるし。

商社の方が来ても、仕事の話じゃなく、世間話をしたりとか、それだけで終わったりとか(笑)。けっこうあります。そういうのが楽しいですね。話すのは好きなんで」


営業が天職なんでしょうね。

「そうっすね、営業が好きですね。与えたい願望が強いんです。
何か言ってもらったら、なるべくそれに応えたい。もちろんその、会社としてマイナスにはできないですよ?

無理なことは無理って言うし、相手も言う。それはもうお互いさまですね。うちもよく頼むんですけど、ほかのメーカーさんに『ちょっと間に合わんけん焼いてくれん?』とかっていうこともあります」

窯元同士であっても、知見を共有できたり、困ったときに助け合えたり。そんなやりとりが交わせるのは、産地としての波佐見の大きな特徴です。

ともすると、どの会社も似たり寄ったりなものづくりになってしまいそうですが、そうはならない、させないという各社のプライドも感じます。交流しながら、自分たちにしかできないことを模索し続けている。


今の時代に、そこでしかできないことって何だろう?と想い馳せると、やはりひとつの答えは手描きに行き着くような気もします。

「手」は、職人一人ひとりのもの。そこからしか生まれ得ないものが、きっとあるはずです。

絵が大嫌いでも、描き続けてみたら

ショールームのなかには、動物や車が描かれた一点ものの器も並んでいます。今年の陶器まつりから販売をはじめました。

聞けば、これらはすべて和峰さんが絵付けを手がけたのだそう。

絵はもともとお好きなんですか。

「いや、大嫌いでしたね」

え?

「それがですね、従業員もみんなびっくりしてる。この絵を描きはじめたのが、陶器まつりの1か月前なんです。
というのも、余った生地がめちゃくちゃたまっていて。お金も払ってるんで、もったいないし、だったら絵付けしてみようかって。

最初は難しかったですけど、やってたらちょっとこう、楽しくなってきて。最近は人物とか犬とか、そういったものを頼まれて描くこともありますね」

工場内には、ほかの商品に混ざって和峰さんが絵付けした器もたくさん並んでいた。


「陶器まつりでおもしろかったのは、虎とか龍をけっこう描いたんです。そうしたら、若い女性がよく買ってくれて。
好きなんですか?って聞いたら、集めてます、と。そういうお客さんもいるんだなと気づきになりましたね」

和峰さんが絵付けした数は、およそ500〜600枚。ほとんどすべてが陶器まつりで売れたといいます。

「最初はもうみんなに馬鹿にされて。『龍とか虎とか、絶対売れんやろ』って言われながら、無視してずっと描いてて。描いたら焼くしかないんで。

ちゃんと売れたから、もう来年から何も言われないです。むしろ描いてくださいって言ってもらいたい(笑)」


それもやっぱり結果、ですね。

「はい、結果です。今も毎日何枚かは必ず描いてます。こうなってくると楽しいですよね」


***


結果がすべて。

人によっては冷たく聞こえるかもしれませんが、和峰さんの口から語られるその言葉には、ポジティブな力を感じました。

理屈やアイデアだけでは、打開できないことがある。頭のなかにとどめるのではなく、まず形にしてこそ、「その先」の話ができる。

何かに行き詰まりそうになったとき、自分も手を動かして次の形をつくっていこうと、そんな前向きな気持ちになりました。


和峰さん、ありがとうございました!

【福峰陶苑】

〒859-3702
長崎県東彼杵郡波佐見町湯無田郷1878−2

Instagram
https://www.instagram.com/fukuhoucachette/


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この記事を書いた人
中川晃輔
千葉県柏市出身。大学卒業後、生きるように働く人の求人メディア「日本仕事百貨」の運営に関わる。2018-2021年に編集長を務め、独立。波佐見町のご近所・東彼杵町へ移り住み、フリーランスの編集者として活動している。