THE HASAMI-YAKI vol.2

THE HASAMI-YAKI vol.2

2019.11.08


“波佐見焼(はさみやき)”ってなんだろう?【後編】

焼きものは、大きく分けると陶器(土もの)と磁器(石もの)に分けられます。原料が粘土であるのを陶器、石であるのを磁器、ふたつを合わせて“陶磁器”と呼ばれることもあります。「陶器と磁器は、プラスティックと鉄を比べるぐらい、材質が違うものなんですよ」と焼きものづくりに携わるみなさんたちは口をそろえます。波佐見焼の多くは、磁器(石もの)で生産されています。

波佐見焼のほとんどは、熊本県の天草でほってきた「天草陶石(とうせき)」という白い石からできている。

風土から生まれ、人に育てられる。

日本には、波佐見焼(長崎)や有田焼(佐賀県)のほかにも、益子焼(栃木県)、九谷焼(石川県)、信楽焼(滋賀県)、備前焼(岡山県)、美濃焼(岐阜県)、常滑焼(愛知県)などなど、紹介しきれないほどに焼きものの産地があります。それぞれが陶器だったり、磁器だったり、と様々。それは、焼きものが「風土」から生まれるものだからです。土地にある土や石を使うことが多く、気候や地質、歴史や文化が黙っていてもにじみ出てしまうのも、とてもおもしろいところです。

長崎・出島から、アジア、ヨーロッパなどに輸出されていた醤油は、「コンプラ瓶」と呼ばれる白磁の徳利のような瓶に詰めて運ばれた。これも波佐見焼であった。

波佐見焼の“分業制”という特徴

ひとつの“モノ”を作る時、それがどんな“モノ”であれ、たくさんの人が関わっています。もちろん、焼きものの世界でも同じ。原料である石を掘る職人はもちろん、窯を製造する工場、筆やカンナなどの道具を作る職人など、多くのプロフェッショナルが力を合わせます。

原料やすべての道具が揃ったところから見ても、「ひとつの焼きものを一社で作り上げることがほとんどない」のが、波佐見焼の驚くべき特徴です。陶土屋、型屋、生地屋、窯元、上絵屋、そして商人。必要なプロセスごとにその道のプロフェッショナルが集まり、窯元や会社の垣根を超え、町が一貫となってひとつの焼きものを仕上げていきます。

機械がやるべきこと、人間がやるべきこともしっかり「分業」。だからこそ、大量生産の中で職人の技術がキラリと光る。

有田焼の下請けとしてお殿様に献上するような美しい模様が描かれる豪華絢爛な焼きものを作る技術を持ち合わせながらも、親しみ深い器をつくることに長け、庶民の暮らしを応援してきた波佐見焼。大量生産を得意としながら、質の高い器を作り続けるという一見相対する価値を、400年もの間しっかりと守り続けてこられたのは、波佐見町という地域がこの「分業制」を通じて「産業」としての焼きものづくりを徹底しているからなのです。

これまでも、そしてこれからも、町が一丸となって力を合わせながら作る焼きもの、それが波佐見焼。確かな技術と、人の力が組み合わせれば、可能性は無限大なのです。 

 

次回は、波佐見焼の歴史にまつわるお話を学芸員の中野雄二さんに伺います。



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この記事を書いた人
Hasami Life編集部