THE HASAMI-YAKI vol.5
波佐見焼が“分業制で”できるまで。
波佐見では、ひとつの焼きものを一社だけで作り上げることが、ほとんどありません。器を大量に生産する中で、質の高い仕上がりを維持するためには、この「分業制」という仕組みが大きな鍵となっています。各々のプロフェッショナルは、各々の持ち場でどのような仕事をしているのでしょうか? 今回は、波佐見焼ができるまでの工程を追いかけていきたいと思います。
① 陶土屋
陶土屋(とうどや)では、焼きもののベースとなる「陶土」をつくります。陶土屋は佐賀県塩田町周辺に多いのですが、これは運搬に便利な川が近くにあったため。波佐見焼の基盤を生み出すプロフェッショナルです。波佐見焼の特徴である白磁の美しさの秘密は、陶土づくりにあり!
② 釉薬屋(絵の具屋)
焼きものの色みや光沢、つまり表情を決める「釉薬(ゆうやく、うわぐすり)」を扱うプロフェッショナル。窯元がイメージする製品に仕上げるため、何度も足を運びながら、釉薬のセレクトや配合を調整していきます。頼りになる色のアドバイザーです。
③ 型屋
器の設計図を立体的な「型」に仕上げるプロフェッショナル。急須や土瓶、茶碗など、型の種類は食器の種類だけあります。それだけでなく、ひとつの食器を作るのにいくつもの型を組み合わせることが多いのです。型は“石膏(せっこう)”で作られ、陶土や焼成方法などさまざまな条件を想定しながら、生地の収縮率を計算して仕上げていきます。技術と経験がものをいい、職人技の集大成ともいえるとても繊細な仕事です。
④ 生地屋
陶土屋が作った「陶土」を型屋が仕上げた「型」に流し込み、目的の形に“成形”するプロフェッショナル(量産されている波佐見焼の多くは、型が使われています)。ローラーマシン、機械ロクロ、鋳込みなど、各種製法があります。
※動画でご紹介します。
⑤ 窯元
釉薬屋から「釉薬」を、生地屋から「生地」を仕入れ、陶磁器を焼き上げる場所。素焼き、下絵付け、釉薬(ゆうやく、うわぐすり)、本焼成(ほんやき)、さらには上絵付け、転写、検品など、たくさんのプロフェッショナルが集まる場所でもあります。
※一部、動画でご紹介します。
でき上がった波佐見焼は、このあと商社に運ばれ、再び検品が行われたあとに全国のショップやお客さまの元へ運ばれていきます。
今回ご紹介したのは、「波佐見焼が“分業制で”できるまで」の基本的な流れですが、生地屋も兼ねる窯元や上絵付け・転写の専門業もあるんですよ。また、原料である石を掘る職人はもちろん、筆やカンナなどの道具を作る職人、新しい器の可能性を探るデザイナー、窯や機械を製造する工場など、さらに多くのプロフェッショナルの力を借りています。
たくさんの人の想いをのせて生まれる波佐見焼。まだまだ、ご紹介しきれていないことばかりですが、このTHE HASAMI-YAKIシリーズでは、今後も波佐見焼にまつわるたくさんの仕事を紹介していきたいと思っています。
【取材協力】
株式会社西山 http://www.cf-nishiyama.jp/
一真窯 https://www.issingama.com/
窯研株式会社波佐見営業所 http://www.yaeshima.co.jp/index.html
原型工房フクタツ