HOME よみもの 波佐見の人 大塚さつきさんの暮らしとうつわ【後編】〜農家の知恵が詰まった竹ざる弁当〜 2022.03.30 大塚さつきさんの暮らしとうつわ【後編】〜農家の知恵が詰まった竹ざる弁当〜 by Hasami Life 編集部(ながみね) 長崎県波佐見町に隣接する町で夫とふたり農業を営む大塚さつきさん。『大塚さつきさんの暮らしとうつわ【前編】 〜育てた野菜を料理するよろこび〜』では、農家をはじめた頃のエピソードから、食やうつわの話をご紹介しました。 料理に関しては『毎月農業共済新聞』でレシピ連載を持つほどの腕前! 後編では、実際にさつきさんに作っていただいた“ふだんごはん”をいただき、Instagramで人気に火がついたきっかけについても伺います。 お弁当箱も、竹ざるも、うつわのひとつ。 Instagramではお弁当を紹介するアカウント @satukiotsuka と、暮らしまわりのあれこれを紹介する @satukiootsuka のふたつを合わせて2万3千人ほどのフォロワーが居るさつきさん。色とりどりのおかずが華やかなお弁当を投稿すると、じわじわとフォロワーが増えたといいます。 「はじめは、農業研修へ出かける夫のために作ったお弁当を投稿していました。毎日作るのでお弁当箱のデザインにも変化がつけたくなって丸、楕円、四角など、形を増やしていきましたね。1週間でローテーションが組めると、作っていても気分が変わるんですよ。大分県の竹細工、秋田県柴田慶信商店の曲げわっぱなど、旅先で買い足すのも楽しみのひとつでした。一方で無印良品のアルミ弁当箱も大活躍しています」 「歳を重ねると食べる量も変わってくるので、今度はサイズ感も重要に。その都度買い足していたら、お弁当箱だけでもこれだけの数になりました。現役で使っていないものも含めると、もう少しありますね。でも、お弁当箱は器のひとつだと思っているので、お弁当以外にもいろいろと活用しています」 編集部が手土産でお持ちしたシュトーレンも大塚さんにかかれば、この通り。わっぱのフタを閉めれば、適度な湿度を保つ保存容器に早変わりです。お弁当箱のほかにもさつきさんが器だと思っているアイテムがもうひとつ。竹ざるです。 「先輩の農家さんがお茶請けや湯のみを風呂敷で包んで、農作業の現場へ持ってきていたのをすごくいいなと思って見ていたんですね。ある日、お弁当箱におかずを詰める時間がなくて、おにぎりだけなら器にのせて軽くラップをかけて風呂敷で包んで持っていける!と。普通の器でもいいけれど、竹ざるなら持ち運んでも割れないし、クッキングシートを敷けば洗うのも楽だし。アウトドアで使う取り皿と箸を添えたら、もうバッチリ。理にかなっている上に写真映えもするので(笑)、我が家の定番になりました」 大塚家だけでなく、Instagramでも話題に。おにぎりだけでなく、いなり寿司やサンドイッチをのせても抜群に見栄えがよく、おいしそう! (撮影:大塚さつき) 竹ざるに限らず、器ごとお弁当にしてしまうのは、農家ではよく見る光景だそうですが、「フォロワーさんの目にはとっても新鮮に映ったみたいですね」とさつきさん。竹ざる弁当を投稿するようになってから、ますます反応が増えたと話します。 「農作業は毎日同じことの繰り返し。すっかり曜日感覚がなくなるのですが、海軍の人たちが曜日感覚を取り戻すために金曜日にカレーを食べるように、わたしも“日曜日は竹ざる弁当の日”と決めた時期があったんです。夫には特になにも伝えていなかったのですが、ある時竹ざる弁当を見て “あ、今日は日曜日だね!”と気がついてふたりで笑いました(笑)」 家でも定番、竹ざるランチ。 最近は畑の近くに家ができたため、繁忙期以外はお昼時に一度、家に戻ってランチをすることも増えたそうです。 「そんな時でも、朝つくりおきしたり、置き弁にするときは竹ざるランチ。おにぎりやおかずをのせ、鍋には汁ものを用意しておきます。戻ってきたら、汁ものだけをさっと温めれば、パパッとランチの完成。今日はふだんからわたしが作っているような、カッコつけないメニューで再現してみますね」 おにぎりは、牛しぐれ味と塩さば&ガリ味の2種類。好物のトルティーヤがいつで食べられるように、と多めに作って冷凍しているというタコミートをベースに玉ねぎ、コーンを加えたじゃがいもの真ん丸コロッケ。サラダは皮つきのりんごスライスを加え、オイルとビネガーと塩でシンプルに味つけ。根菜たっぷりの豚汁と一緒にいただきます。 今回は特別にHasami Lifeで取り扱っている『Yoko Andersson Yamanoのオーバルプレート』と『西花のそば猪口(あみ)』を使ってテーブルコーディネートしていただきました。 「Hasami Lifeもよく拝見させていただいているのですが、使ってみたかった器はダントツでこのふたつ! 波佐見焼といったら白磁と染付ですし、わたしの好きなスリップウェアとも合うだろうなぁ、と思って前々からチェックしていたんです。白いオーバル皿は取り皿としても使いやすいし、ワンプレートにもできる十分な大きさ。サラダを盛りつけているのは、中川紀夫さん のスリップウェアですが、やっぱり相性抜群でしたね!」 「あと、このそば猪口はサイズがすごくいいんです。わたしはそば猪口が大好きなのでどこへ出かけてもよく見るのですが、最近はこれよりもひとまわり小さいものが多いんです。でも、そば猪口って少し大きめのほうがそうめんのつけ汁入れにもできるし、小鉢としても使えるし、使い勝手がいいと思うんですよね。うちでは、お客さまにお出しするお茶やコーヒーもそば猪口を使うので、200mlくらい入るこのサイズはやっぱりとってもいい。ちなみにそば猪口はあえて柄違いでお出しすることで、自分の飲みものが一目瞭然。だから、たくさんあっても困らないんですよ(笑)」 誰かに譲ったり、金継ぎをしたり。 好きで集めていると、年々増え続けてしまう器。収納するにも限界があり、もっとほしいけどこれ以上は我慢しないと、と思っている読者の方も多いと思います。大塚さんはどのようにしているのでしょう? 「ほしい人が居れば、譲るようになりました。服と一緒で買った当時は愛用していたものでも、今の自分やライフスタイルには似合わなくなって出番が少なくなる器はたくさんあります。でも、自分以外の人にとっては今、まさに使いたい器かもしれません。あの子ならこの器を素敵に使ってくれるかもしれない、と思ったら積極的に声をかけて見てもらうようにしています。一度は気に入って買った大切な器、職人さんが心を込めて作っている焼きものですから、できるだけ捨てないようにしています」 波佐見町では、毎年12月に使わなくなった器をあたらしい器と交換できる「器替まつり」を開催しています。興味のある方は、こちらの記事もどうぞ! 「波佐見町の みんなのアトリエはざま で行われている小松知子さんの金継ぎ教室にも通っています。金継ぎは、欠けや割れを漆で装着し、金粉などで装飾する昔ながらの技法。細かい作業と乾かす工程を繰り返しながら5個くらいの器を同時に継いでいくのですが、小さな欠けでも仕上がりまでは1ヶ月程度を要します。ゆっくり時間をかけて金継ぎをしたあとの器もまた味があって素敵なんですよ」 譲ったり、直したり。大好きな器たちと日々、向き合って暮らしているさつきさんには、絶対に離れられない離れたくない器もあります。それは “さつき” と描かれたお茶碗と湯のみ。 「幼い頃、母が絵付をしてプレゼントしてくれました。一年に一度、3月3日のひな祭りには、今でも必ずこのふたつを出して使います。母の愛が詰まっていますよね。これからも大切にしていきます」 (最初から読む) 大塚さつきさんの暮らしとうつわ【前編】 〜育てた野菜を料理するよろこび〜 大塚さつきさんの暮らしとうつわ【後編】〜農家の知恵が詰まった竹ざる弁当〜 Yoko Andersson Yamanoリムオーバル 260mm ¥2,420(税込)〜 詳しく見る 西花あみ そば猪口 ¥1,100(税込) 詳しく見る Tweet 前の記事へ 一覧へ戻る 次の記事へ Hasami Life 編集部(ながみね) この記事を書いた人 Hasami Life 編集部(ながみね) 関連記事 2024.05.31 窯元探訪【永峰窯】vol.33 長崎隆紘『脈々と受け継がれる焼きもの魂』 波佐見町の永尾郷に1936年に創業した『永峰窯(えいほうがま)』さん。量産型の波佐見町では少なくなった家族経営の窯元です。後編では、ショップや工房を案内いただきながら、先代であるお父様に代替わりを決断したときのお話や、4代目社長の長崎隆紘さんが考える永峰窯の展望などについて伺います。 2024.05.24 窯元探訪【永峰窯】vol.32 長崎隆紘『“小規模”に注目した、着実で丁寧なモノづくり』 波佐見には、町のいたるところに波佐見焼と真摯に向き合う「人」が存在します。今回、おじゃましたのは、『永峰窯(えいほうがま)』さん。波佐見町の永尾郷地区に1936年に創業。4代目社長の長崎隆紘さんご夫婦とご両親をメインに、家族で営む窯元です。小規模ならではの利点を生かしたモノづくりのお話と、4代目の隆紘さんが思う今後の展望を前後編に分けて伺います。 2024.04.26 窯元探訪【和山】 Vol.31 廣田和樹『機械と人の手が織りなす、多彩な表情の器たち』 波佐見町の中でも有数の、量産が可能な窯元として知られる『和山』さん。前編では、ロゴに込められた思いやオリジナルブランドが誕生した背景を伺いました。後編では波佐見焼の生産工程を追いかけながら、安定的な量産を可能にする体制や、多様なデザインが生まれる理由を深掘りします。
2024.05.31 窯元探訪【永峰窯】vol.33 長崎隆紘『脈々と受け継がれる焼きもの魂』 波佐見町の永尾郷に1936年に創業した『永峰窯(えいほうがま)』さん。量産型の波佐見町では少なくなった家族経営の窯元です。後編では、ショップや工房を案内いただきながら、先代であるお父様に代替わりを決断したときのお話や、4代目社長の長崎隆紘さんが考える永峰窯の展望などについて伺います。
2024.05.24 窯元探訪【永峰窯】vol.32 長崎隆紘『“小規模”に注目した、着実で丁寧なモノづくり』 波佐見には、町のいたるところに波佐見焼と真摯に向き合う「人」が存在します。今回、おじゃましたのは、『永峰窯(えいほうがま)』さん。波佐見町の永尾郷地区に1936年に創業。4代目社長の長崎隆紘さんご夫婦とご両親をメインに、家族で営む窯元です。小規模ならではの利点を生かしたモノづくりのお話と、4代目の隆紘さんが思う今後の展望を前後編に分けて伺います。
2024.04.26 窯元探訪【和山】 Vol.31 廣田和樹『機械と人の手が織りなす、多彩な表情の器たち』 波佐見町の中でも有数の、量産が可能な窯元として知られる『和山』さん。前編では、ロゴに込められた思いやオリジナルブランドが誕生した背景を伺いました。後編では波佐見焼の生産工程を追いかけながら、安定的な量産を可能にする体制や、多様なデザインが生まれる理由を深掘りします。