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ごきげんに食べて暮らしたい。お米を楽しむ夫婦ユニット「ごはん同盟」さんの、器の選び方。

by 中川晃輔
ごきげんに食べて暮らしたい。お米を楽しむ夫婦ユニット「ごはん同盟」さんの、器の選び方。

「ごはんのおとも」と言えば、思い浮かぶのは、お米をモリモリ食べたくなるおかずや一品料理。

それと同じように、器も「ごはんのおとも」だと思うのです。

どんな器に盛るかによって、おいしさが引き立ったり、同じ料理でも新鮮に味わえたり。ごはんと器の力が合わさることで、毎日の食事はよりおいしく、楽しくなっていくように思います。

そこで今回は、「ごはんのおともとしての器」をテーマに、ぴったりなおふたりに話を聞きました。

登場していただくのは、炊飯系フードユニット「ごはん同盟」の試作係(調理担当)のしらいのりこさんと、試食係(企画・執筆担当)のシライジュンイチさん。

「おかわりは世界を救う」を合言葉に、お米を炊くワークショップや料理教室、メニュー開発、取材・執筆やイベントの企画運営などを通じて、お米やごはんの楽しさを広めています。
 
そんなおふたりに、Hasami Lifeで購入できる器をいくつかピックアップしてもらい、3月に発売されたばかりの著書『ごきげんな晩酌 家飲みが楽しくなる日本酒のおつまみ65』のなかから3品の料理を盛りつけていただきました。

スタイリングやコーディネートのプロというよりも、あくまでごはんをつくって食べることが大好きなおふたり。自由で素直な言葉のなかにこそ、毎日の食を楽しむヒントが見つかるかもしれません。

伺ったのは、都内のご自宅。

マンションの一室のドアを開けると、ジュンイチさんとのりこさんが揃って出迎えてくれました。



お部屋に入ってまず目についたのは、黄色く熟した梅。ちょうど梅干しを仕込んでいたそう。

「忙しいときに限って大量に買ってきちゃって、あとからアワアワするんですよね」とのりこさん。

棚には保存瓶に入った何種類もの梅干しや、おひつや羽釜といったごはん炊きの道具たち、お酒や調味料、ポットなどがきれいに並んでいます。




冷たいお茶をいただきつつ、おしゃべりを楽しんでいると、おふたりにピックアップしていただいた器が長崎県波佐見町から到着!

さっそく開封してみます。

ジュンイチ:

料理は3品あるんです。豚の唐揚げと、ピーマンのおひたし、あとはマグロとキムチのなめろう。

で、器はどれ使おう?

 

のりこ:

揚げ物はここらへんの黄色か、こっちの白。あ、これもいいかもなあ。ピーマンはちょっと深さがあったほうがいい。なめろうは、どうしようか?

 

ジュンイチ:

これかわいいよね。

 

のりこ:

かわいい。これにしよっか。

(ジュンイチさんを見ながら)…なんかちょっと今、欲しくなってない? ほら、口元がニヤッとしてる。

――:

(笑)。気に入ったものがあれば、買い取りも可能とのことですよ。

 

ジュンイチ:

いや、いいなと思ってさ。

 

のりこ:

いいよね。いろいろ使ってみよう。

わたしは料理しながら話す、っていう感じでいいのかな?

 

――:

はい、大丈夫です。キッチンの様子も、たまに撮影してもいいですか?

 

のりこ:

どうぞどうぞ。

 

――:

おふたりは、ユニットとして活動をはじめたのが。

 

ジュンイチ:

2011年かな。

 

――:

器はもともとお好きだったんですか。

 

のりこ:

うち、実家が仕出し屋だったから、料理は身近にあって当たり前にやってたんですけど。器に興味を持ち出したのは…料理研究家になってからだよね。ここ5、6年の話で。

それまでは器に執着がなかったっていうか。何買っていいかわからなかった。

 

――:

そこからどういう流れで関心が向いていったんでしょう?

 

のりこ:

雑誌や書籍の撮影で、スタイリストさんがいい器をいっぱい持ってきてくれるんです。すごくステキで盛りやすいものが多いので、そのときに、これどこで買ったんですか?とか、どういう人がつくってるんですか?とか聞いたり。

料理研究家の先生のおうちにお邪魔すると、器がすっごいいっぱいあったりして。そういうのを見てるうちに、どんどん目が肥えてきた。

 

ジュンイチ:

そうそう。料理に合わせる器のパターンがわかってくるよね。ファッション雑誌を見る感じで、この体型の人にはこの服が似合う、みたいな。相性がわかってくると、自分たちで買えるようになったかな。

 

――:

産地の好みとかって、ありますか?

 

ジュンイチ:

うちはどこだろうね。…あんまり産地で意識してないかもね。

 

――:

波佐見焼は?

 

のりこ:

最初のころは、波佐見焼もけっこう使ってましたよ。でも、だんだん好みが変わってきて、使わなくなっちゃった。

 

ジュンイチ:

そもそも磁器を買い慣れてないよね。やっぱり土のもの、陶器のほうが多くて。うちの料理的にも、磁器はむずかしいような感じがする。

 

のりこ:

色が入るとね、ポップな感じがするじゃない? うちの料理って根暗だから、合わないんですよ。

 

――:

料理が根暗(笑)。

 

のりこ:

うん、地味だから、器が派手だとちぐはぐになっちゃうっていうか。

でももうちょっとすると、また使いたくなるかもしれない。

 

ジュンイチ:

ああいう黄色のとか?

 

のりこ:

そうそうそう。年とるとだんだん派手なものが好きになってくる。大阪のおばちゃんがヒョウ柄をよく着てる、みたいなことで。

昔は無地の土っぽいものが好きだったんですけど、最近は柄物も増えたよね。

 

――:

好きになる対象も、ちょっとずつ変わってきているんですね。

もうちょっと遡ると、おふたりそれぞれの好みの変遷って、どういう感じだったんですか。もともと好きなものは似ていたのか、けっこう違っていたのか。

 

ジュンイチ:

どうだろう。

 

のりこ:

でもほら、佐賀はエポックメイキングだったじゃん。唐津の隆太窯とか、有田の博物館(九州陶磁文化館)も行ったけどすごかった。あそこから器の見方がちょっと変わったと思う。 

唐津のほうの器って、枯れた感じのものが多いじゃないですか。最初は使いこなせないっていうか、地味すぎると思ってたんですけど、すっごい盛り映えするの。

 

――:

最初の印象と使ってみたときの感じ方に、ギャップがある?

 

のりこ:

器っておもしろくて、ぱっと見で「これは使いやすそうだな」って思って買っても、意外と使いづらかったりする。かと思えば、なんかピンとこなかったんだけど、すんごいいい仕事するなとか。

 

ジュンイチ:

そんなに気に入ってないけど、なんか出番が多いやつとかある。

 

――:

ああ、わかります! 不思議ですよね。

 

のりこ:

スタイリストさんとかは、そういうことまで見えてると思うんですけど、わたしは料理のほうに意識がいってるから、器のことはパッと見じゃわからないんですよ。ただ、売れっ子の作家さんの器ってやっぱり盛りやすいの。

 

――:

何が違うんでしょう?

 

のりこ:

ビジュアル的にほかの作家さんとそんなに変わらないんですよ。ほんのちょっとの違いなんですよね。

 

ジュンイチ:

造形としていいものをつくりたい作家さんと、つくったものを実際に使って食べてる人のつくるものって、やっぱり違うんだろうなって気がする。

 

――:

どんな料理を盛りたいかによっても変わりますよね。器の好みが合う作家さんは、料理の好みも似ているのかも。

おふたりが普段使っている器も、見せてもらってもいいですか。

 

ジュンイチ:

いいですよ。玄関のほうに棚があって、ちょっと狭いんですけど…。

 

ジュンイチ:

これが隆太窯の器。

 

のりこ:

これなんて地味の極致じゃないですか(笑)。でも、盛り映えするんだよねえ。

やっぱ九州の器の底力はすごいなって思います。

 

ジュンイチ:

逆に酒器は、土っぽいものはそんなに多くなくて。

 

――:

へえ、そこは逆転するんですね。

 

ジュンイチ:

たぶん、おつまみとか料理とあわせて飲むことが多いので、酒器が目立たないほうがいいんだろうな、と思います。

唐津の徳利とかね、いいんですよ。すごくいいんだけど、あのボテっとした、THE 土!みたいな。あれをうちに置くイメージはまだ湧かなくて。つるっとした白磁を選びがちですね。

 

――:

陶器と磁器を組み合わせてコーディネートするのも楽しいですよね。全部揃えなきゃいけない、なんて決まりもないですし。

 

のりこ:

うん。年齢を重ねると似合う服が変わっていくみたいに、器の好みも変わっていくから。

あんまりこう!って決めつけないで、いろいろチャレンジするとおもしろいよね。波佐見焼とか磁器を使ってこなかった人も、まずは酒器を変えてみるとか、少しずつ試してみたらいいと思う。

そんな話をしているうちに、すっかりお昼時。台所からいい匂いが漂ってきます。

「というわけで」と、のりこさん。

「ごはんもできたし、もちろん食べて帰りますよね?」

はい、いただきます!

この日のメニューは、今年3月に出版されたおふたりの著書『ごきげんな晩酌 家飲みが楽しくなる日本酒のおつまみ65』(山と溪谷社)のなかから、夏にぴったりな3品を選んでつくっていただきました。

 

❶ 丸焼きピーマンのおひたし


◎材料 [2人分]

ピーマン …… 6個
つけ汁
 |だし …… 1/2カップ
 |薄口しょうゆ …… 大さじ1
削り節 …… 適量

◎つくり方

1 ピーマンは丸ごと魚焼きグリルに並べ、中火で10分、焼き目がつくまでしっかり焼く。

2 合わせたつけ汁に1を漬けてよくからめる。器に盛りつけ、削り節をのせていただく。
 

「かわいいよね。立ち上がりが少しあるのも盛りやすい。これをあの黒いの(唐津焼)に盛ったら、渋いけど、どこの料亭ですか?って」(のりこ)

「それもそれでかっこいいけどね。日常のごはんって考えたときの、重たさ・軽さのバランスは大事」(ジュンイチ)

 

❷ マグロとキムチのなめろう


◎材料 [2人分]

マグロ …… 5切れ(100g) ※ 書籍内ではかつおを使用
キムチ ……50g
ごま油 …… 大さじ1/2
コチュジャン …… 小さじ1
えごまの葉(お好みで)…… 適量

◎つくり方

1 マグロとキムチはみじん切りにする。

2 すべての材料を混ぜ合わせる。お好みでえごまの葉に包んでいただいても。

「柄があると、柄に助けてもらえるところあるよね」(のりこ)

「ピーマンを盛っている“とくさ”や、この“あみ”という柄も、波佐見焼の伝統柄を取り入れているんですよ」(編集部)

「呉須の青も、涼しげで夏っぽくていいね」(ジュンイチ)

 

❸ 豚からカレー風味


◎材料 [2人分]

豚ヒレ肉(とんかつ用)……300g
かぼちゃ …… 1/8個  ※ 書籍内ではいんげんとれんこんを使用
塩 …… 少々
揚げ油 …… 適量
下味
 |オイスターソース …… 大さじ1/2
 |日本酒 …… 大さじ1/2
 |カレー粉 …… 小さじ1
 |塩 …… 小さじ1/2
片栗粉 …… 大さじ2

◎つくり方

1 豚肉は2cm幅に切り、麺棒などでたたいて薄く伸ばす。下味をもみこみ、片栗粉をまぶす。

2 フライパンに2cmほど油を入れ、170℃に熱し、7mm厚に切ったかぼちゃを4分ほど揚げて取り出し、塩をふる。

3 続いて豚肉を裏表を返しながら、2〜3分を目安に衣がおいしそうに色づくまで揚げる。薄く伸ばしているので揚げ時間は短時間で OK。揚げものビギナーでも失敗なし。

 

(当初盛っていた白い角皿を見て)「唐揚げさ、黄色いやつに盛り替えてもよさそうな気がするんだけど、どう思う?」(ジュンイチ)

(盛り直してみて)「同じ料理でも、元気な感じになるね。若者系」(のりこ)

「もうちょっと多めに盛ってもいいのかも」(ジュンイチ)

 
↓ちなみに、ビフォー写真はこちら。

どちらもおいしそうですが、たしかに印象が変わります。まさに洋服のコーディネートのよう。

さらにもう一品、追加でつくってくれたのは卵焼き。

四角いお皿は正面ができるので、盛りつけるのがむずかしいそうです。かわいい絵柄も、盛り方によっては全体が隠れてしまってもったいない。

「まずは丸いお皿から使いはじめて、慣れてきたら四角は次のステップで使うといいと思う」(のりこ)

炊きたてのごはんとともに、いただきます。

どの料理も日本酒がほしくなる一品ばかり。お米が原料の日本酒に合う料理は、ごはんのおともにもぴったりです。

おふたりいわく、「我が家の晩酌は、晩ごはん時だけとは限りません」とのこと。「仕事を終えた夕暮れ時でも、週末の昼下がりでも、ちょっとひと息つきたいときに日本酒があれば、それはもうとっておきの晩酌の時間です」(『ごきげんな晩酌』より)

(波佐見町には訪れたことがないというふたりに、町のことや波佐見焼がつくられる過程のことを話しながら)


――:

…ごちそうさまでした。はあ〜、どれもおいしかったです。

ちなみに、波佐見焼は最近あまり使っていなかったということですが、あらためて今回使ってみて、どうでした?


のりこ:

やっぱりいいかもって思ったよね。

 

ジュンイチ:

そうね。磁器を使いはじめたい人にはちょうどいいと思う。

 

のりこ:

あくまで個人の印象だけど、波佐見焼って、北欧の世界観が好きな人が買う器なのかなって思ってたんだよね。たぶん、わたしがたまたまそういう波佐見焼の器ばかり見てただけだと思うんだけど。

 

ジュンイチ:

なんとなく、ポップで若い人向きなイメージはあったかな。

 

のりこ:

そうそう。でも今回使ってみて、こんなかわいい柄があったり、ちっちゃくて使いやすい器があったり。こういう中年のふたり暮らしとかでもね、ちょこちょこ盛るのにすごくいいなと思った。

 

のりこ:

今って家族がどんどん減ってきてる時代だから、自分でちっちゃく楽しむ器っていうのはすごくいい。磁器はつるっとしていて丈夫で、使い勝手もいいし、カジュアルに楽しめるよね。

 

――:

お話を聞いていて、おふたりのレシピの考え方や伝え方って、なんとなく、産地としての波佐見の雰囲気と似ているような気がしました。

 

のりこ:

へえ、そうなんだ。どういうところで感じました?

 

――:

ここ数年で“波佐見焼”というブランドを新しくつくってきた産地で、これ!といった型がないところとか。いろんな個性の職人さんが、お互いに技術やアイデアを共有しながら、分業で一つひとつの器をつくっていくところも。

おおらかで、肩肘張っていない感じが似ているんじゃないかなと。ちょっとこじつけみたいですが。

 

ジュンイチ:

まあ、普段の料理だもんね。

 

のりこ:

うん。本当に、普通の料理なんでね。

つくっている人たちのおおらかさがあるっていう話とか、いいなと思ったし、そういうことまでわかると、もっと好きになる人が増えると思う。わたしも行ってみたくなりました。

 

――:

ぜひぜひ! 波佐見ツアー、今度やりましょう。

 

ごはん同盟さんの新著『ごきげんな晩酌 家飲みが楽しくなる日本酒のおつまみ65』には、今回つくっていただいた3品を含む、全65品のレシピがたっぷりと掲載されています。

巻末には、おふたりならではの晩酌の楽しみ方、酒器やお酒の選び方、さらには日本酒のタイプ別の索引ページも。

きっと晩酌が楽しくなる一冊です。ぜひお手にとってみてください。

『ごきげんな晩酌 家飲みが楽しくなる日本酒のおつまみ65』(山と溪谷社)

 

また、おふたりがHasami Lifeのなかからピックアップした器もご紹介します。ごきげんな晩酌のおともに、ぜひ。

 

▼essence of life

・essence of life agasukeプレート〈22cm〉

・essence of life  agasukeサラダボウル〈S〉

・essence of life   agasuke 酒器セット

 

▼Common

・Common   プレート 210mm(Yellow)

 

▼西花

・西花 とくさ 楕円皿

・西花 あみ 5寸皿

 

▼SAIKAI

・SAIKAI     kotohogi 正角皿

・SAIKAI     haku碗 侘黒

・SAIKAI  彫刻紋〈白磁〉 半角皿

 


ごはん同盟

試作係(調理担当)のしらいのりこと、試食係(企画担当)のシライジュンイチの夫婦二人による炊飯系フードユニット。得意分野はお米料理とごはんに合うおかず全般。著書に「ごきげんな晩酌 家飲みが楽しくなる日本酒のおつまみ65」(山と渓谷社)、「しらいのりこの絶品! ご飯のおとも101」(NHK出版)、「これがほんとの料理のきほん」(成美堂出版)などがある。

ごはん同盟の最新情報については、各種SNSをご確認ください。

・ごはん同盟 Twitter / Instagram

・しらいのりこ Twitter / Instagram

・シライジュンイチ Twitter / Instagram

中川晃輔
この記事を書いた人
中川晃輔
千葉県柏市出身。大学卒業後、生きるように働く人の求人メディア「日本仕事百貨」の運営に関わる。2018-2021年に編集長を務め、独立。波佐見町のご近所・東彼杵町へ移り住み、フリーランスの編集者として活動している。