窯元探訪 vol.3

by Hasami Life編集部
窯元探訪 vol.3

波佐見町には全部で59つの窯元があります。小さな町のいたるところに、波佐見焼と真摯に向き合う「人」が存在します。このシリーズでは、ひとつひとつの窯元を順番に尋ね、器づくりについてはもちろん、ふだんは見られないプライベートな顔まで、ご紹介します。 

中尾山にある『一真窯』のデザイナー・作家である眞崎善太さんへのインタビュー最終回。眞崎さんのモットーである「食器つくりから心の器つくり」を掘り下げ、新しいデザインの考え方について、お話を伺います。

 

【一真窯】デザイナー・作家、眞崎善太さん


―― 削りのデザインはどのように思いついたのですか?

眞崎さん(以下、眞崎) 「個性」を追求したんです。見た目はシンプルで無地。ここに職人技を加えてみようと。じゃあ、カンナの彫りはどうだろうって。こうやって11つ手彫りでやってる焼きものって、波佐見になかったから。

”一真彫り”と呼ばれる、彫りの技術。オリジナル30種類以上の"カンナ”という道具を模様によって使い分ける。力の入れ方、彫るスピードなど、その使い方にも個性があり、道具と人が一体となって生み出される。

 

眞崎  彫りが入ると、顔がずいぶんと変わりますよね。サイズや形は一緒。でも、ちがう。組み合わせを変えてもいい。カンナ彫りをしたことによって、それぞれの個性が生きてきた。新しい彫りのデザインは、現場で掘りながら作っていきますね。ポッとひらめいた時にダダダダって始めちゃう。後で絞り込めばいいですから。

彫りを始めた理由はもうひとつあるよ。

 

――    その理由、ぜひ教えてください。

眞崎  当時、売り上げががた落ちした理由の一つに中国食器の参入があった。名だたる老舗はそれなりの器を使いますけれども、100円ショップ、全国に100店舗以上あるようなチェーン店の業務用食器はほとんど中国食器になった。そして白い器でいえば、ホームセンターでマグカップが98円。

 

――    安いですね。

眞崎  その白い器と比較した時に「日本人ならではの手技がこの白い器には入ってますよ」と差別化してみたかったんです。これがうまくいけば、海外でも日本人の技がどんどんどんどん認められてくかもしれない。

今はもうグローバルですから、世界中との闘いになります。コスト競争には参戦できない。もうね、できないことはできないでいいんですよ。その代わりの付加価値をいただかないと。僕らだって、ちょっと使う物だったら100円ショップでいいじゃないですか。だけど、身の周りに大事に置きたいっていうものではないから。そういうものをつくっていかないと。

 

「何のために、何の概念で、器を作っているのかと言われたら“小さな幸せ”を提案するためと答えます」と眞崎さん。

 

眞崎  器には「ソフト」の一面がある。「あなたの器って、なんとなく使ったら楽しくなるんだよね」とか、「言葉で言えないんだけど、なんとなくほっとするよ」とか、「あなたの器でお茶をすると、なぜか会話が弾むのよ」とか。こういうのは計算できない感性の部分ですから。器を通して、そういった提案をしたい。一真窯の器を食卓で使ったら、きっと幸せな気持ちになりますよって。 

「あの人が作った釣竿っていうのはやっぱり違うよね」とか、「あの人が作ったギターって、音が違うんだよね」とか、「あの人に設計してもらった家って、なんか最高だよね」とか。それぞれの世界に必ずあるじゃないですか。

 

――    確かに必ずありますね。人の温もりの力というか。 

眞崎  ハードの裏にあるものは、そこなんですよ。なぜなら、手を添えてるわけですから。原石を掘る人、原石をいただいて土を作る人、土から生地を作る人、釉薬を作る人、絵の具を作る人、窯を焚く人、いろんな人が携わってますから。だからこそ、物にはソフトがありますよ。そこを一時期、日本人って見失ってたんですよ。あまりにも合理的なやり方を選んだから、ことごとく失敗した。今まで西洋的な考え方でやってきたけど、何かが違う。競争ばっかりは何かが違う。今、やっと日本人が振り返ろうとしてること。それを自分は器でやってるだけなの。

 

眞崎さんのモットー「食器つくりから心の器つくり」。器を通して感動を伝えるために焼き物づくり一筋!

眞崎  繊細、深みはどこにあるのか? そこに早く気付かないと。早く気付いた人にやってくるのが次の時代ですよ。 

お客さんも「やっぱり違うな」ってわかります。話してたら「そういう考え方でやってるんだな」って伝わるだろうし。そういう、人と人とのエネルギーってあるんじゃないですか? 手で細工してるから尚のこと。機械で一発勝負ドンじゃないですから。

最終的には、ものづくりに甘んじてはいけないんですね。「これでいい」って自分が思ってしまうことがダメなの。ずっとずっと追いかけないと。物=手作業、手作業=自分。自分のハート自体を積み上げて磨いていかないと、そこから生まれる器も磨かれませんから。これが辛いんですよ。でも、不安になればなるほど、次の一手に期待できる。

彫りの技術だけでなく、オリジナルの”カンナ”の開発や改良も大切な要素のひとつ。こうして作り出されるデザインの可能性は無限大!

 

―― 新しいシリーズの構想はすでにあるんですか?

眞崎  もうわかんないですよ。感性次第。どこで勉強されましたかってよく聞かれるんですけど、大学も専門学校も行ってない。現場で覚えて、現場でデザインしてきました。だから、自分のDNAの絞り込みしかないんですよね。おや、だんだん目が光ってきましたね?(笑)

 

――    あれ、最初は死んでましたか、私の目(笑)

眞崎  最初はなんだかぼーっと聞いてたのに、入り込んできたもんね。眞崎ワールドの中に(笑)

「器もつくるけど、お笑い担当でもあるんですよ。本当はそっちの方が本業かも!」と話す眞崎さんの巧みな話術にのせられて。


眞崎  家庭に入ると、ダイニングやキッチンが主な生活空間になりますよね。そこに器も入ってくる。小さな幸せとして。同じ白でも、いろんな考え方ができるというか、セットでもいいし、家族でも使えるし。白で統一してるけど、彫りが違うから「これはわたしが使うわ。これはパパっぽいわ」なんてこともありますよね。しかもね、和食がものすごくスタイリッシュになるんですよ!

 

――    「花街道」「温故知新」「白磁」。同じ方が作ったとは思えない、ふり幅の大きさを感じます。

眞崎  いいこと言いましたね(笑)。物の見方は360度ですから。我々は見ようと思ったら360度見れるわけです。だから角度を変えて、今回はこのコーナー、次はこのコーナーって、1つだけに絞らなくてもいいんです。ただ、今のところ「これをやってる」だけでだから。

透けるような白磁の美しさには、洗練された匠の技が隠される。わずか1.8mmという極限まで彫り込んだ生地の薄さこそが”一真彫り”の特徴。「器は完成品は65%、使い込んで100%に仕上げる楽しみがあるんですよ」

 

――    心を鍛えて、また新しいものを作る、と。

眞崎  はい。また新しいものを作る。この手彫りの流れで、今度は色を組み合わせた「色染めシリーズ」が生まれているんです。彫ってから色を染めるデザインを確立しようとしています。こうやって、次ができていくんでしょうね。

 

――    今後の展開も楽しみです!

眞崎  ただ、今1人でデザインをしているのがデメリットだなあとは思っています。息子も一真窯で働いていますが、「ここでやります」というちゃんとした返事はまだもらっていなくて。背中で語りたいとは思ってるんですけど、こればっかりは本人次第だし、体験して積み上げていくことだと思っています。 

一人、彫りの手業を教えてる子がいて、もう何年かやってもらっていますよ。だから、この彫りは彼が引き継いでくれるだろうと思っています。

私は次のテーマ作りをしないと。ソフトの面でね。




【一真窯】

長崎県東彼杵郡波佐見町中尾郷670
0956-85-5305

公式サイト
https://www.issingama.com/

公式通販サイト
https://issingama.com/shop/

Instagram
https://www.instagram.com/isshingama/


【一真窯ショップ"とっとっと”】

営業時間 10001200
13:001700
定休日 不定休 ※HPで要確認


眞崎さん、興味深いお話の数々をありがとうございました! 次回は、翔芳窯さんを訪ねます。



(最初から読む)

 

 

この記事に関連する商品
この記事を書いた人
Hasami Life編集部