【波佐見・高山まつりレポート2023】戦時中に埋められた茶碗&復刻版も販売中!

【波佐見・高山まつりレポート2023】戦時中に埋められた茶碗&復刻版も販売中!

2023.04.14

波佐見町の少し外れ、嬉野と武雄の分かれ道。ふと左のほうに目を向けると、さくらが立ち並ぶ川沿いに工場のような場所が見えます。

橋を渡り、道を進むと「高山」の入り口です。

 

高山(たかやま)・・・1951年より髙塚製陶としてスタート。1993年~髙山陶器に名前を変え、2021年11月より再び「高山」の名称になる。

 

2022年4月に初めて行われた発掘イベント。そのときは3柄の茶碗が発掘されましたが、「あともう1柄、埋まっているはずだ」との情報をもとに、昨年よりさらに深く穴を掘ることになりました。会場は、高山の本社のさらに奥の奥にある山ぎわです。


発掘イベントスタート!

初参加の方も多く、「掘っても掘っても茶碗ばかり!」との声がちらほら聞こえてきます。一度に約3,000個ほどのやきものが焼けるといわれる窯、3窯分の器が埋まっているとのことで、なかなか底が見えません。

10時から12時までの約2時間、私も一般の参加者の女性と協力して、一か所を掘り進めていきました。

ここは80年前、茶碗を埋められる前は“ものはら”(※)として使用されていた場所。

※ものはら…登り窯の近くにあった焼き物の失敗作を捨てる場所のこと。発掘イベントが行われた近くにも昔登り窯があったことが分かる。

埋められた器以外にも当時の失敗作や、ハマ、支柱や棚板など様々なものが埋まっていました。

 

棚板(右)窯で器を焼く際に使う板。この板の上に器をのせて焼いていた。支柱(左)棚板を支える柱。

途中、失敗作の器を見つけるのも楽しみの一つ。それぞれの時代に作られていた器を知る上では欠かせない資料です。


焼成の際、棚板に灰がかかり溶けて変色し、ビードロ状になっている。

 

様々な年代の波佐見焼。この模様は昭和初期から大正の初めごろによくあったものだそう。

 

新たな発見と、当時の作り方から再現した器。

今年のイベントでは新たに江戸末期~明治初期まで生産されていた器の破片を発掘することができました。今では波佐見焼といえば白地に呉須と呼ばれる藍色の釉薬で模様をつけるのが一般的ですが、掘り出された破片は飴色の釉薬や織部色の釉薬で、波佐見ではあまり見られない色でした。

 

当時は器を重ねて焼いていたため、内側の釉薬がはがれている。

昨年掘り出した器の中には、多少周りが欠けているものの、全体像が分かる器もありました。昭和8年~戦前まで作られたとされていた祥瑞柄の茶碗です。

 

祥瑞柄(しょんずいがら)・・・松と山、船などの縁起の良い柄のこと。この茶碗はそれに加え、七宝柄、亀甲柄などの縁起の良い柄が施された茶碗。

肥前地区で現在作られている一般的な茶碗は“もたせ”(※)つけていますが、昔は手ろくろが一般的だったので、下から上に持ち上げるように形作られています。

※もたせ…肥前地区特有の作り方。器の縁下5㎜~1cmに厚みを持たせる。ゆがみを防ぐ効果がある。

この祥瑞柄の茶碗が「復刻版」として新たに生まれ変わりました。

当時、手ろくろで作られた形を型で再現し、もたせを付けず底の重心が一番重くなるように設計されています。判子で押されていた柄はパットで絵付し、登り窯での焼成を再現するため、実際に波佐見町にある国史跡「畑ノ原窯」で焼成を行っています。

 

(左)復刻した茶碗。(右)掘り出された茶碗。

 

内側の模様も再現されている


染付祥瑞茶碗 復刻版
¥2,200(税込)
詳しく見る

※波佐見町にある文化財「畑ノ原」で焼成しておりますので割れ以外の理由での返品交換はお受けできない場合があります。

 

復刻版は、日常的にお茶碗として使用していただけます。専用箱に入れてお届けしますので贈り物としてプレゼントにも◎。当時のことを感じながら食卓のお茶碗として使っていただくのもおすすめです。

 

茶碗を埋めた張本人・福田ニ一郎さんにお話を伺いました!

福田ニ一郎(ふくだにいちろう)さん。髙塚製陶(現・高山)の三男で福田家(西日本陶器)の養子となり、現在は同社の会長を務めている。

――:どうしてお茶碗を埋めたのですか?

福田: 器は戦時中、日陶連(日本陶磁器連盟)に売り先を制限されてしまってね。「単窯」という大きくない窯で焼いていたから、作れる数は知れていたし、「隠してしまおう!」と従業員みんなで土の中に埋めていたんですよ。

――:窯から出してそのまま埋めたのですか?

高塚:いやいや、昔は「3個詰め」って言ってね、茶碗やけん、数枚を重ねて貯めとったのさ。それをピラミッド型にずっと高く積み上げていたのです。

 

戦時中、茶碗を埋めた従業員たち。

福田:いま、波佐見や有田、三河内で使っている“サンテナ”は、私と西海陶器の先代の会長が作ったんだよ。商業組合の中で「サンテナ委員会」を作ってさ。

 

サンテナ...波佐見町を中心に流通しているやきものを運搬、収納する際に利用する入れ物。交換制になっており、商品の受け取りの際などは「から」のサンテナと交換している。

福田:昔は藁で編んだ竹籠にやきものを入れて移動しよったわけさ。でも「これはいかん!」と思って、サンテナを作るために小倉から人を呼んで、浅型と中型と深型の型を作ってもらったのさ。最初から「流通」を視野に入れて作ったから、重ねられるようにして、持ち手になる穴をつけて。焼き物が重いから、入れ物は軽くしてもらったんだよ。

深型は入れすぎると、重すぎて持てなかった。浅型は浅すぎて使いにくかったから、最終的に中型が一番多く出回ってるね。これは本当にみんなのためになったと思ってるよ。

 

サンテナができる前の運搬に使われていたわら包装。今では包装できる職人がとても少なくなっている。

 

会場の様子

発掘イベントが終わった後は、会場内の飲食エリアにキッチンバスやキッチンカーが登場し、盛り上がっていました。ほかにも、高山の器が安く買えるスペースも!

 

土曜日限定でしたが、工場見学も実施され、パット印刷から焼成の工程までを見ることもできました。

パット印刷に使用するシリコンパット。器のサイズによって大きさが異なるため、大量に置かれている。他にも用途によってさまざまな種類がある。

 

柄をつける際、ごみや粉などを布で拭いてから、器が動かないように台に乗せて印刷する。

 

高台付近などパット印刷で絵付できない部分は、回転台に器をのせ手書きで線を描く。

絵付した器を釉掛けする。スポンジの部分で余計な釉薬を落とす。

 

支柱と棚板を積み上げ焼物を入れて焼成する。器によってはハマを下に敷いて焼成する。

今回、1.4~1.5mの深さを掘りましたが、残念ながら新しい柄の器は発見されませんでした。

掘り出せたのは、まだまだ3分の1程度。すべての掘り出すことはできませんでしたが、この発掘イベントは来年も開催されるかも...?しれません!

詳しくは高山のInstagramをご覧ください。高山の今後にも注目です。

 



再販決定!

今回は復刻版だけでなく、昨年大人気だった出土碗も再販できることになりました。

※できるだけ綺麗なものを選別していますが、釉薬の上から土の色が沈着してしまっているものがあります。

※鉄粉や釉薬の濃淡、ゆがみなど、現代の良品基準では弾かれるものも商品に含まれます。

※手づくりかつ薪窯(登り窯)で焼いているため個体差が大きいです。高台裏の「高」のゴム印も、押印されたものとそうでないものがあります。

※見た目ですぐわかるヒビや割れなどがある商品以外は、返品交換することができません。



出土碗 花
¥1,100(税込)
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出土碗 蘭
¥1,100(税込)
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出土碗 十草
¥1,100(税込)
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小さな苔玉など、草花を生ける花器として、専用箱に入れてインテリアの一部として、歴史的な価値とロマンを感じていただける焼きものです。長い間、土の中に埋まっていたもののため、食事での使用をおすすめできませんが、ぜひ、復刻版とあわせてお楽しみください。

 


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この記事を書いた人
Hasami Life 編集部(たぞえ)