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minokamoがゆく!中尾山・秋陶めぐり【前編】〜焼きもの 秋さんぽ〜

by minokamo(長尾明子)
minokamoがゆく!中尾山・秋陶めぐり【前編】〜焼きもの 秋さんぽ〜

波佐見町(はさみ・ちょう)の中心部から少しはずれた山の中には、今でも多くの窯元が集まる『中尾山(なかおやま)』があります。

正式には「波佐見町中尾郷」ですが、地元では『中尾山』と呼ぶのが一般的。世界最大規模の登り窯跡がふたつもあるなど、古くから続く“陶器の里”として知られています。

中尾山では、4月上旬に「桜陶祭(おうとうさい)」、10月下旬に「秋陶めぐり(しゅうとうめぐり)」というふたつのお祭りが開催されます。特に秋陶めぐりは過ごしやすい季節のため、ゆったりと窯元を訪ね歩けると評判。焼きもの好きの間で人気の高いイベントです。

今年は、なんと3年ぶりの通常開催! そこで少しでもみなさんに秋陶めぐりの空気をおすそわけできたら...と、料理家であり、写真家・フードスタイリスト・イラストレーターと多才な顔を持つ minokamo(長尾明子)さんを波佐見へお招きし、秋陶めぐりを1日レポートしていただくことに。

それではさっそくバトンタッチ!

(ここからの写真と文は、minokamoさんです)


初めての波佐見、初めての中尾山。

こんにちは、minokamoです。

波佐見焼。もちろん、手にしたことはあるし、#波佐見焼をたのしむレシピ でもお世話になったし、素敵な器が色々。漠然とそんなイメージはあるけれど、どんな町で、どんな方たちが作陶されてるのか? までは知りません。

そうです、念願の波佐見! はてさて、そもそも東京からどうやって向かおうか? と思っていたところ、今回の旅仲間でもあり、編集部のながみねさん が教えてくれたのが、福岡空港を経由して高速バスで波佐見へ向かうコース。

東京〜福岡間は便数も多く、フライト時間は1時間30分ちょっと。福岡空港から博多や天神にあるバスターミナルまで電車で10分程度なので、福岡グルメをサクッと楽しんでから高速バスに乗車することも可! 今回は、おうどんをいただきましたよ。

波佐見行きのバスはだいたい1時間に1本はあるし、比較的、時期を問わず、旅費をお手頃に抑えられる場合が多いみたい。

このバスターミナルからは、唐津焼の佐賀県や小鹿田焼(おんたやき)の大分県への便も多数。福岡を拠点にすれば、波佐見はもちろん、九州の焼きものの産地をいくつか一緒にめぐる! なんてこともできそう。とワクワクしながら、乗車です。

バスには2時間弱、揺られることにはなりますが、眠り姫になれば、問題なし。うどんを食べてお腹いっぱいだったので、ぐっすり。午前中に家を出て、夕方には波佐見に到着しましたよ。

 

いざ、秋晴れの秋陶めぐりへ。

前のりして翌日、秋陶めぐりへ。週末2日間開催されるのですが、わたしは日曜日に回ることにしました。当日は、波佐見町中心部にある宿から車に乗って会場へ向かいます。

『中尾山』という名前の通り、お山一体いたるところに窯元あり! ブースが並ぶ陶器市とは違い、それぞれの窯元を歩いて回るのです。

天気がよくてすでに気持ちいい。最初にお山の上まで登ってから降りるか、その逆か。大きく2コースありますが、初めての中尾山ですから、まずはてっぺんを目指して登ってみることにしました。

今年の秋陶めぐりには、18の窯元とショップが参加しているそうですが、半日くらいですべてを回ることができるとか(もちろん、歩くスピードやお買いもの時の決断力で変わります)。

昔ながらの路地裏を抜け、最初に出迎えてくれたのは赤い提灯が目をひく『ながせ陶房』さん。陶房横のスペースには、懐かしい映画館のような舞台と観客席があってわくわく。

ギャラリーには、おたまじゃくしなど、いろんな動物の箸置きが。とってもかわいい。

陶房前の広場には屋台が出ていたので、お山をのぼるためにも腹ごなし。まずは「玉こんにゃく」を注文です。ルーレットを回して3〜6玉、どれかに決まるという楽しいシステム。わたしは5玉となかなか健闘。いい頃合いのお味でおいしいー! ルーレットはもちろん、陶製です。こちらも、かわいすぎる。

広場を見渡すと「くじら焼き」なるものも発見! 

ポテサラソース味をセレクトすると、もちもちの生地とポテトサラダの相性が抜群でした。波佐見のご近所・東彼杵町からやってきたというくじら焼き。東彼杵町は、鯨が有名な町だそうですよ(波佐見の居酒屋でも、鯨を食べることができました!)。

あんこ味も食べてみたくなって、おかわりしそうになりましたが(玉こんにゃくもいただいたというのに!笑)、まだまだはじまったばかりの秋陶めぐり。小腹を満たす程度にとどめて、いざ行かん!

橋の上に大きな壺が! 飾り壺というそうです。そして道端の至るところに陶器。焼きものと、橋と、秋景色。お祭り気分が高まります。

 

波佐見焼を手に妄想。至極の時間。

中尾山には窯元だけでなく、ショップも点在しています。中でも『赤井倉(あかいぐら)』さんは、味わいのある民家の大広間にたっぷりと焼きものが展示してありました。

二階に上がると、新品の波佐見焼に比べると、少しだけお高めのアンティークの器がずらり。ほしいものもたくさんありますが、ぐっと我慢!

小道を入って坂を登り始めると、左手に見えてきたのは『陶房青(とうぼうあお)』さん。繊細なシルエットの焼きものや、赤ずきんちゃんなどキュートな絵付がされた器など、キュンとくる波佐見焼がたくさんありました。

今回は仙茶碗と急須、プレートを入手させてもらいました。仙茶碗は、お茶はもちろん、茶碗蒸しや白玉入りぜんざいなんかを入れてもよさそう!

……なんて、まだ卓上デビュー前の器を眺めながら、いろんな想像をふくらませる時間がまた最高に楽しいのです。そんな器たちが秋陶めぐりではお値打ちで入手できるのですから、夢のよう!

実際に購入した波佐見焼を使って料理する様子は【後編】で!


のんびりと窯元をめぐりつつ、ちょっとがんばって(といっても、気候がよいから本当に気持ちいいんですよ!)急勾配を登ると、世界第2位となる巨大な登り窯跡「中尾上登窯跡」がお目見え。坂に沿って段々と小さな塀。一体、どれだけ大きい窯だったのでしょうか? 

登り窯の上のほうまで歩き、振り返ったときの景色といったら! 思わず両手を広げたくなる気持ちよさ。この地が陶器の里として長い歴史を誇ってきたこと、この地で暮らしてきた人々のことを想像すると、ああ……ロマンですね。



お腹がへったら、カレーと窯焼きピザを。

焼きものに景色に、と夢中になっていると、とうにお昼の時間が過ぎていました。「こんな時間に迎え入れてくれるところはあるかな?」と思っていると、坂のてっぺんに『四季舎(しきしゃ)』さん。

黒米カレーと香ばしいピザを、頬張る! 頬張る!

ピザは元々、波佐見焼を焼いていた窯で焼いてくれるんですよ。食後にコーヒーをお願いすると、なんとコーヒーの入っているカップは持ち帰ってよいそうで。陶器の里とはいえ、太っ腹!

四季舎さんを運営する温かいご家族たちとの出会いも含め、改めて波佐見に来られてよかったと感じました。みなさんもぜひ、立ち寄ってみて。

四季舎さんがある場所が、だいたいお山のてっぺん。ここから、今度はくだっていきます。

 

おしゃべりしながら、器を選ぶ。

お次に向かったのは『紀窯(きがま)』さん。都内で開催される展示などを通じて存じておりましたが、窯で会える喜びはひとしおです。

顔なじみなので、ご本人の写真も一枚。中川紀夫さんです。地元だと、ご本人も心なしかリラックスされているような。ご家族で迎えてくれるのも、あたたかくていいですね。

素敵なギャラリーで「ここから作品が生まれていたのか」と感じられるのは、器好きにはたまらない体験。紀窯さんでも、新しい器を迎え入れましたよ。

久しぶりの再会にほくほくご機嫌な気分で、今度は紀窯さんから目と鼻の先にある『一真窯(いっしんがま)』さんの工房へ。

ふだんは工房として使われている場所で、お祭りの期間だけ特別に焼きものを売っている窯元も多く、製作途中の器を間近で見られるのもまたイベントの醍醐味ですよね。大きなバッグがあたってしまわないように注意、注意です。

ゆったりのんびりと楽しんでいると、あっという間に夕方に。ずんずんと坂を下り、最後に訪れたのは『大新窯(おおしんがま)』さん。こちらに昔あった登り窯は全長170mの規模。現在は世界第一位、最長の登り窯跡とされているそうです。すごい。

ショップに入ると、動物の絵がかわいい波佐見焼がたくさん。子どもでなくても、ほしくなってしまう愛らしさです。なんでも絵付は、69歳の職人さんが担当されているそう。おばあさまでとにかく表情を描くのが得意な方なのだ、と教えてもらいました。かわいすぎて、ほっこり脱力〜。

二階は一面デットストックで、今ではなかなか出会えない絵付の器、丁寧な手仕事が注ぎ込まれた急須などが。

普段からお買いものはできますが、秋陶めぐりなどのイベント時はよりお手頃に購入できるそう。

お店の方とお話すると「この器を作った人は、こんな職人さんだったんだよ」とか、「今ではなかなかこれを作る人はいない」とか色々な情報を教えてくれます。

大新窯さんだけでなく、どこの窯元も、お店も、みなさんとっても親切です。ぜひ、勇気を出して話しかけてみてくださいね。



旅先で“器”を迎え入れるということ。

さて、まだまだ伝えたいことはたくさん。すべて回ったので、紹介しきれなかった場所もたくさんあるのですが、いったんレポートはおしまいです。

秋のハイキングのような気分でまる一日、気持ちよく巡り歩き、時折、歴史も感じながら、新しい器をたくさん迎え入れました。

日常のご飯でも、そのときの旅を、景色を、おいしかったものまでを思い出せる。旅先で出会った器には、そんな力があります。とっておきの一枚に自分で作った料理を盛りつけるとき、本当に豊かで幸せな気持ちになれるのです。




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使わなくなった器をあたらしい器と交換できる、波佐見町『皿山器替まつり』。今年は2022年12月3日〜4日に開催予定です。最新情報はこちら

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この記事を書いた人
minokamo(長尾明子)
岐阜県美濃加茂市出身、料理家、写真家、フードスタイリスト、イラストレーター。祖母と過ごした経験がきっかけで料理家に。地の食材を活かした提案、郷土食の取材を行う。テレビ、ラジオ、雑誌各メディアでもレシピを紹介。食、手仕事、酒場を求め旅することもライフワーク! 近著は、手軽に手打ちパスタやうどんも作れる『粉100水50でつくる、すいとん』(技術評論社)、『料理旅から、ただいま』(風土社)、PAPERSKYweb「japanese Local Cuisine」、岐阜新聞「毎日ごはん」連載中。
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