あたたかみのある土に、やわらかな白。「白化粧」の魅力
シンプルながらもただの白じゃない。味わいがあり、アンティークのような風合いも醸し出す。このうつわの名は「白化粧」。
優しくあたたかみのある質感が人気のシリーズです。
波佐見では少数派「土もの」のうつわ
日用食器として大量生産されてきたという歴史的背景がある波佐見焼は、天草陶石からつくられる“つるっ”としたうつわの「磁器」が主流。
丈夫で汚れも付きづらく、食洗機や電子レンジにも対応しているものが多いのが、「石もの(=磁器)」の良いところです。
一方で、「土もの(=陶器)」をメインに作り続ける窯元も、波佐見町内には存在しています。
そのなかで、「白化粧」を手がけるのは「筒山太一窯(つつやたいちがま)」さん。 Hasami Lifeでも、2022年に「窯元探訪」シリーズで取材しています。
「白化粧」シリーズの美しさをつくる「粉引」の技法
さて、窯元探訪でたっぷり語られている「白化粧」の魅力ですが、その名前の由来となった技法に注目し、改めてご紹介します。
「白化粧」はその名の通り、陶器に白く化粧を施したような見た目のうつわです。
波佐見焼で主流の磁器が、天草陶石の真っ白な色をベースとしているのに対し、陶器は使用する土によって、素地の色が変わってきます。原料の粘土に鉄分などが多く含まれていると、焼き上がった土の色は赤黒くなるなど、素地の色が仕上がりに大きく影響してくるのです。
そこで、陶器の表面を白くするのが、白化粧。赤い土でつくったうつわを素焼きし、その上からもう一度「化粧土」をかけて素焼きをします。
そうすることで、うつわの表面は白い化粧土の色で覆われ、その上から色や絵をつけたり、表面の質感を変えることができるのです。
なかでも、化粧土をかけた部分をさらにヘラなどで削って絵や模様を描くのは「掻き落とし(かきおとし)」、刷毛で化粧土を薄く塗り、素地とのコントラストを出すのは「刷毛目(はけめ)」、化粧土を全面に施した上から透明の釉薬をかけるのは「粉引(こひき/こびき)」と呼ばれています。
「白化粧」シリーズで使われているのはこの「粉引」の技法です。
筒山太一窯でつくられる「白化粧」は、粒子の粗い化粧土を使用することで、白い釉薬とはまた別の、ザラっとした質感が表現されています。
釉薬とは異なる素材で素地を白く覆うことで表現の幅を広げたり、素地の土や釉薬との質感の違いを出すことで、陶器の味わいを深めたりするのが「粉引」という技法なのです。
また、一つひとつ職人の手によってかけられる化粧土は、その厚さや縁の素地の見え方などが異なり、焼き上がる過程でそれぞれ個性が出てきます。一つとして同じものがないところも、「白化粧」の特徴です。
粉引は扱いがむずかしい?
内側から素地(土)、化粧土、透明釉と3層構造になっているのが「白化粧」。
化粧土特有の質感や色による個性が魅力的で、通常よりもさらにもうひと手間かかってつくられる過程にも価値があるといえるでしょう。
しかし、その構造ゆえに、扱いが難しいといわれる点もあるのです。 日常づかいする上で大変なこと。それはズバリ「水じみ」や「匂い移り・色移り」、「カビ」の発生です。
そもそも、陶器には目には見えない小さな穴が多く開いています。そのため磁器に比べて吸水率が高く、うつわが水分を吸ってしまいます。
特に、粉引のうつわは素地と釉薬の間に化粧土があることで、一度素地にしみ込んでしまった水分が今度は抜け出しにくくなってしまうのです。
同様の理由で、油じみや調味料などのしみもできやすく、色や匂いも移りやすくなっています。
それらをなるべく防ぐには、初めての使用の前に「目止め」をする、毎回使う前に水やお湯にくぐらせる、などの方法が有効です。
そして、目止めをした後や使用後は、必ずよく乾かしてから片付けてくださいね。
※粉引のうつわは、米のとぎ汁や片栗粉といった有機物を使った一般的な目止めをすることを推奨されない場合もあります。
取り扱いの方法は産地や窯元によって異なるので、気になる場合は一度お問い合わせして確認してみてください。
手間がかかるからこそ愛着がわく。
このように、使っていくためにはお手入れが必要な「白化粧」ですが、手間がかかるからこそ、愛着がわいてきませんか?
例えば、革靴にブラシをかけてからクリームをつけて磨く。真鍮のアクセサリーの経年変化を愉しむ。そんな感覚で、「白化粧」を日常で使ってみてはいかがでしょうか。
実際に使ってみても、ぽってりとした質感と、落ち着いたやさしさの白があらゆる食材と調和します。
写真のようにフルーツをのせても、お肉や煮物など茶色い料理を盛り付けても、どんな場面だって食材を引き立ててくれますよ。
また、磁器よりも分厚く、熱が伝わりづらいため、熱いものを入れても安全に持ちやすいです。機能面でも侮るなかれ。
使えば使うほど、自分だけの味わいが出てくるうつわ。 そんな「白化粧」を、ぜひお手に取ってみてください。
そして……
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今回ご紹介した「白化粧」の「ボウル 中」を、応募いただいた中から3名にお届けします。土のあたたかみがありつつも、冷やし中華だって映える。夏にも使えるうつわです。
みなさまのご参加をお待ちしております!