【15時のおやつ】白いお皿の包容力。
波佐見の暮らしや焼きものにまつわる話、そしてちょっぴりプライベートなことまで。編集部員が自由気ままに綴ります(不定期更新)。
+++
とてもシンプルなお菓子をいただきました。
箱を開けると、バターの甘い香り。まあるく焼いて、しっかり等分したと思われるクラシカルな三角形。その飾らない佇まいを見ていたら、手づかみでパクッといきたい気持ちがどこかへ出かけ、わたしはお皿を手に取っていました。
「ガトー・オ・ブール」、つまりは「バターケーキ」。ほどよくメの詰まった生地は、ふんわりを売りにした焼き菓子とは一線を画す食感。卵、砂糖、牛乳、バターだけで作られていると聞いていたのですが、ひと口食べてびっくり。表面に塩とバターを溶かしたものが塗られていました。しょっぱいという意外性。ちょっとした仕掛けのあるケーキだったのです。
シンプルなケーキには、シンプルなお皿を。気軽な気持ちで手に取った白皿でしたが、そうだ。こちらも職人の手仕事による“仕掛け”が施されている1枚だったんだ。
リム(皿のふちの部分)と皿の中央を見比べると、色が少しだけ違って見えませんか? これは気のせいでも、光のせいでもありません。通常は同じ厚さでかける「釉薬」を、あえて薄く掛けることで濃淡のムラをつくり、ふたつのニュアンスを出しているらしいのです。触れると、質感もやや違うんですよ!
「釉薬のかけ方」という職人技を生かした皿。これは量産を強みとする焼きものの産地だからできることでもあると思うのです。確かな技術から生まれる繊細な表情。うーん、しびれる! けっして安い買いものではありませんでしたが、今では、お菓子だけでなく、料理にも活躍しているので大満足です。
このシリーズは『agasuke』という方言がネーミングされています。アガスケは東北弁で「格好つけ」のような意味。このさりげない美しさ、確かにアガスケですよね(笑)。ちなみにデザインした阿部薫太郎(あべ くんたろう)さんは岩手県花巻市生まれなのですが、何を隠そう、わたしも東北人。しかも、岩手県のおとなり青森県出身なのです。この美しい白のコントラストを見ていると、いつかの雪景色をいくつも思い出せるようで、そういった意味でもとても心が惹かれた1枚でした。
素朴なバターケーキを食べていたら、急に牛乳が飲みたくなって。そして、わたしの15時はより白い時間になりました。コーヒーでも紅茶でもなく、牛乳ってところがいいでしょう?(笑)。せっかくなので、食器棚から白いマグカップを選んで。このマグカップも波佐見焼。窯元探訪でおじゃました一真窯さんの〈白磁〉です。
どんなお菓子や料理、飲みものも受け止めてくれる懐の広さは、白い器に勝るものはありません。でも「白」とひと括りにしても、その世界は無限に広がっています。波佐見焼だけでも、いろいろな「白」があるんだろうな。これから少しずつ集めてみようと思っています。みなさんもお気に入りの白い波佐見焼があったら、ぜひ、教えてくださいね。
(ながみね)
(最初から読む)