HOME よみもの 波佐見を歩く 【長崎〜佐賀】焼きもの、買い付け旅に同行しちゃいました。 2023.06.02 【長崎〜佐賀】焼きもの、買い付け旅に同行しちゃいました。 by Hasami Life 編集部 たとえば、あるお店に並ぶかわいい雑貨たち。手作りしたものを直接売る場合もありますが、作り手の代わりにお客さまの手に届けるのも「お店」の仕事。もちろん、うつわ屋さんも同じです。波佐見町にある『Ô YANE(オーヤネ)』は、波佐見焼はもちろん、全国の焼きものを扱うお店。産地から仕入れるうつわたちは、バイヤーの目利きによって選ばれています。 “近々、次の企画展のために焼きものを買い付けしに行くらしい!”情報を小耳に挟んだHasami Life編集部。企画担当の福田孝高さん、販売担当の田﨑美雪さんに交渉し、その買い付け旅に同行させてもらえることになりました。そもそも、買い付けってどんな感じ? 窯元さんとはどんなやりとりをしているの? 知りたいことはいっぱい。3日間に渡ってバイヤーのお仕事に密着です。 【1日目】長崎・波佐見からスタートし、佐賀・嬉野へ。 初日は朝10時に集合し、波佐見町の中でも窯元が多く集まる「中尾山」へ。最初におじゃまする一真窯(いっしんがま)さんは、Hasami Lifeの人気シリーズ『窯元探訪』の記念すべき1号の取材も快く受けてくださった窯元さんです。 ●波佐見焼●一真窯(いっしんがま) 買い付けのお目当ては、一点ものの一輪差しとワイングラス。昨年も同企画を販売し、大人気だったそう! 「ワイングラスは飲み口の部分がポイント。口当たりがよくなるように削っているんだよ」と社長でもあり、デザイナーの眞崎善太さん。 一真窯では「カンナ」という道具を使い、白磁に手彫りで模様を作り出す。これが透けるような美しさに。すべて手作業。 眞崎さんと、企画展までに制作いただくことをお約束してこの日は別れる。よろしくお願いいたします! 一真窯さんをあとにしてお昼休憩を挟み、一路、長崎県から佐賀県嬉野市へ。といっても、県境にある波佐見町ですから、嬉野はおとなりの市。嬉野温泉もあり、観光客にも人気の地で昔から受け継がれているのが「肥前吉田焼(ひぜんよしだやき)」です。 ●肥前吉田焼●副千製陶所(そえせんせいとうじょ) 工房の一角にたくさんの肥前吉田焼(以下、吉田焼)。吉田焼の代名詞といえる水玉模様も。田﨑さん、さっそく気になるものを見つけた様子。 「この水玉の色は変えられますか?」と相談。「うんうん。できるよ。何色にしましょうか?」と社長の副島謙一さん。 工房も案内してくださった副島さん。「焼きもののパーツってお菓子みたいでおいしそうでしょ?」 と、型から取っ手の部分になる生地を取り出して。本当、型抜きクッキーみたい! 吉田焼について質問を重ねるHasami Life編集部にも「よかよか。なんでも聞いて! いつでも寄って」と。 お忙しそうなのにとても機嫌のよいふたりの社長さんに会って、こちらまで元気をもらった初日。窯元さんって明るい人が多いのかも! 今日は早めに休んで明日に備えます。 【2日目】ちょっぴり遠出して唐津と伊万里へ。 本日最初の目的地は佐賀県唐津市。波佐見からは車で約1時間、とそれほど遠くはないのですが、意外と足を運ぶ機会の少ないエリアです。 この辺りで作られる唐津焼は、波佐見焼とだいぶ作風が異なり、ひとつひとつ生地から焼成まで手作りする窯元が多いため『作家の町』といわれることも。大杉皿屋窯さんへおじゃましてご挨拶です。 ●唐津焼●大杉皿屋窯(おおすぎさらやがま) 昭和46年創業の大杉皿屋窯。バイヤーのふたりもきちんとお話を伺うのが初めてだそう。 数々の作品展で受賞歴のある代表の大橋裕さん。すべてろくろで作るので一点ものが多い。ここで修行し、巣立っていった独立組も多いそう。まさに作家の町! 実家がお風呂屋さんだった大橋さん。釜炊きで般若の面を焼いたところから作家生活がはじまったそう。当時の写真も。人生っておもしろい! 唐津市呉服町にある直売店へ移動し、大量にセレクトして下代※で購入。そのまま持ち帰る。土ものの素敵な唐津焼をたくさん仕入れていました。田﨑さんはキャンドルホルダーにロックオン! ※流通業界用語で「上代(じょうだい)」は販売価格、「下代(げだい)」は卸値のことを指します。下代で仕入れ、上代で売ることで利益が発生しますが、これらは小売店や商社を含むバイヤーの特権です。下代の価格はお互いの関係性や条件(購入数、時期など)によっても変動します。 さらに車で移動し、佐賀県伊万里市大川内町へ。風鈴祭りで知られる「伊万里大川内山」は観光地としても有名。どことなく、中尾山に似た空気を持っていました。 ●伊万里鍋島焼●青山窯(せいざんがま) 伊万里焼、鍋島焼について詳しく教えてくさった社長の川副史郎さん。江戸時代、将軍家へ献上されていたのが鍋島焼だそう(詳しくは、近日公開)。現在、青山窯の工房は武雄市にある。 美しい青翠色をした「鍋島青磁」も人気が高い。田﨑さん、デザイン性の高い香炉を手に重さをチェック! もちろん、風鈴の買い付けはマスト。磁器の大きさで音が変わる。 事務所に移動し、すぐに制作に入れるよう、商品名をその場でお互いメモ。 「あとで正式に発注書を送りますね!」というやりとりをしてお店を後に。 せっかくだから、と大川内山を散歩することに。 汗ばむ陽気でしたが、気持ちのいい1日となりました。こじんまりとしたエリアですが、うつわ屋さんも点在しており、駐車場も完備。みなさんもぜひ、お出かけください。 【3日目】最終日は有田焼とみかわち焼を探しに。 最終日は、佐賀県有田町〜長崎県佐世保市のコース。県境の波佐見町からすると、どちらもたいへんご近所です。焼きもの好きの方ならご存じに違いない「有田焼」の窯元をふたつ回ったあと、唐子が有名な佐世保の三川内へ向かいます。 ●有田焼●やま平窯(やまへいがま) 豪華絢爛な上絵付けのイメージが強い有田焼。近年これまでの技術を活かしたシンプルなうつわの人気が増しているそう。 「うつわを選ぶ側の“多様性”を感じるようになりました。有田焼もずいぶんと変化していますね」と社長の山本博文さん。話を聞くふたりの目も真剣。 「世の中にとって不必要なものは作らない」けれど、それは「お客様が欲しがるもの」を作ることではない、という言葉に魂を感じる。かっこいい。 大人気の泡(AWA)シリーズ。実際の「泡」を使って模様をつけているそうだが、詳細は秘密。唯一無二の美しい表情なので、実際に手に取ってほしい! ●有田焼●皓洋窯(こうようがま) 窯主の前田洋介さんと美樹さんご夫婦が対応してくださった。前田さんは3代目にあたる。 初代、先代は酒器や宝袋の型をした湯呑みを多く制作してきたそう。工房にはこれまで作った焼きものが並ぶ。宝袋の湯呑みは手にフィットしやすく、今でも注文が多いとか。 皓洋窯といえば、心を込めて手描きする愛らしい染付が人気。昨今はシンプルなデザインの焼きものも多く手がける。写真はカヌレカップ! Hasami Life編集部も混ぜてもらって相談中。企画展に向けて、縁錆(ふちさび=縁の部分のさび模様)をアレンジしてもらう予定。仕上がりがたのしみ! ●みかわち焼●嘉泉窯(かせんがま) 1603年創業。みかわち焼の特徴である繊細緻密な手描きをベースに、唐子など幅広い作品を手がける歴史ある窯元。 現当主の金氏葉子さんは15代の金氏嘉一郎さんに次いで、15.5代を担っているそう。 献上品として描かれていた唐子(中国風の髪形や服装をした子どもが遊んでいる姿を描いたもの)。唐子は奇数が基本。蝶追いかける意匠は特に好まれる。 唐子のコーヒーフィルターを仕入れることに決定。満場一致! 今回は7軒の窯元から仕入れをして帰って来ました。新しく作ってもらうために発注したり、今あるものをそのまま買って帰ってきたり、仕入れ方は本当にいろいろ。最後にバイヤーのふたりにも一言いただきます。 福田孝高さん(右) 毎年、この企画展でお世話になっている窯元さんも多く、小ロットから色やアレンジをご相談させていただいています。セレクトは基本的に田﨑さんにお任せ。「それは大丈夫かな? 売れるかな?」と思ったときだけ、話し合うようにしています。実際、お店でお客さんと接しているのは、田﨑さんですからね! 田﨑美雪さん(左) 毎日、お客様と話をしながら「お店にどんなうつわを置いたら、喜ばれるかな?」というのを常に考えています。こうして窯元さんを回ってお話することで、どのように制作されているか、こだわりはどこか、手間ひまをかけているポイントを直接伺って、窯元さんのお人柄も含めてお客様にしっかりお伝えできるのが一番うれしいですね。 Hasami Life編集部はほぼ初めて波佐見を飛び出して取材になりました。波佐見焼とは一味も二味もちがう焼きものの風合い、工房、そして制作過程。それぞれの産地をまわることで、波佐見焼の新しい一面も知ることができたように思います。 企画展のお知らせは、決まり次第Hasami Lifeでも発信いたします。福田さん、田﨑さん、ありがとうございました! せっかく長崎〜佐賀を回って来ましたので、もう少し詳しく産地のことをまとめてお届けすることにしました。近日中に公開予定です。こちらもどうぞ、お楽しみに。 【お世話になった窯元一覧】 ●波佐見焼● 一真窯(いっしんがま)https://www.instagram.com/issingama/ ●肥前吉田焼● 副千製陶所(そえせんせいとうじょ)https://www.instagram.com/soesenseitousho/ ●唐津焼● 大杉皿屋窯(おおすぎさらやがま)http://www.oosugisarayagama.jp/sub3.html ●伊万里鍋島焼● 青山窯(せいざんがま)https://www.instagram.com/seizan_imari/ ●有田焼● やま平窯(やまへいがま)https://www.instagram.com/yamaheigama/ 皓洋窯(こうようがま)https://www.instagram.com/kouyougama.arita/ ●みかわち焼● 嘉泉窯(かせんがま)http://kasengama.com/old/ こちらもおすすめ! pale ジャグ ¥5,500 agasuke スーププレート ¥6,820 dip mug〈M〉 ¥2,970 kotohogi 小皿 ¥2,200 ワイングラス 215ml ¥1,320 Tweet 前の記事へ 一覧へ戻る 次の記事へ Hasami Life 編集部 この記事を書いた人 Hasami Life 編集部 関連記事 2023.07.22 西の原9店舗散策まとめ 波佐見町の人気スポット「西の原」は、古くから続いた福幸製陶所の跡地に建てられました。当時の面影を残した建物では、現在9店舗が営業しています。 地元民はもちろん、県内外から観光客がやってくる場所、波佐見へきたら、ぜひとも立ち寄ってほしい場所。 9つのお店を一挙にご紹介していきます。 2023.07.21 西の原散策~ ➒氷窯アイス こめたま編 ~ 「氷窯アイス こめたま」は、季節の味が存分に楽しめるアイス屋さん。西の原エリアの一番奥にあります。 メニューはキャラメル系、チョコ系、フルーツ系の大きく3つに分かれており、季節ごとに旬のフレーバーが登場。もちろんドリンクメニューも同様にシーズンごとに違う味が楽しめます! 2023.07.21 西の原散策~ ➑にぎりめしかわち編 ~ 「にぎりめし かわち」ではその名の通り、波佐見町の川内(かわち)地区で作られたお米や食材を使ったおにぎりが食べられます。 具材の味噌や梅も手作り。店内で自由に食べられるダイコンやキュウリ、ゴーヤなどのお漬物も毎朝手づくり。このお漬物は販売している日もあるそうなので、気になる方はレジ横のカウンターを要チェック。
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